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アングル:離脱巡る英国債相場上昇に危うさ、物価上昇で反落も
3月28日、英国のEU離脱を巡る不透明感を反映し、英長期国債が主要国の国債市場の中で最も堅調に推移しているが、インフレ率の上昇などが契機となり、上昇相場に終止符が打たれるかもしれない。写真はユーロ硬貨と英ポンド紙幣。英マンチェスターで昨年3月撮影(2017年 ロイター/Phil Noble/Illustration)
[ロンドン 28日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感を反映し、英長期国債が主要国の国債市場の中で最も堅調に推移している。しかし、インフレ率の上昇やイングランド銀行(中央銀行、BOE)の利上げ観測の高まりが契機となり、上昇相場に終止符が打たれるかもしれない。
20年物と30年物の英国債利回りは27日、約5カ月ぶりの低水準に近付いた。対照的に、期間が短めの英国債利回りは先週、1月初め以来最大の上昇率を示した。2月の消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率が2.3%と、中銀目標の2%を超えたことが背景にある。
英国債の2年物と30年物の利回り格差は157ベーシスポイント(bp)前後に縮小。主要国でこれよりもイールドカーブ(利回り曲線)がフラットなのは日本だけだ。
長期国債の利回り低下には、EU離脱後の英国経済が低迷し、ひいては物価、金利に影響を及ぼすのではないかとの警戒感が寄与している。しかし多くのストラテジストは、物価上昇の可能性が過小評価されており、利回りはいずれ上昇するとみる。
2%の物価目標が将来にわたって達成されると想定した場合、インフレ率を差し引いた英長期国債の実質利回りは現在、50年物に至るまでマイナスとなっている。
直近のロイター調査では、CPI上昇率は今年末に3%に近付く見通しだが、前回物価が高騰した2008─11年の経験に照らすと、これでも低過ぎるかもしれない。
ノムラの国際調査責任者、ケビン・ゲイノー氏は「英国債市場は、現時点で最も大きな(イールドカーブの)スティープ化取引を仕掛けられる市場だ。インフレ動向は予想よりずっと悪いものになるだろう」と述べた。
先週公表されたロイター調査では、現在1.175%前後の10年物英国債利回りは1年後に1.67%前後まで上昇する見通し。しかし2.0%以上に達すると予想したストラテジストも数名いた。
BOEの今月の金融政策委員会(MPC)では、クリスティン・フォーブス委員が物価上昇圧力の高まりを理由に25bpの利上げを主張し、他にも近く利上げ票を投じる可能性を示唆している委員がいる。ただ、大半の委員は当面、目標の2%を超える物価上昇を容認すべきとの立場だ。
英国ではエネルギー価格の上昇に加え、EU離脱を選択した昨年6月の国民投票以来のポンド安という要因も加わり、他国以上に物価上昇の切迫感がある。
<一時的要因>
今年に入ってドイツやスイスの国債利回りが上昇し、米国と日本の国債利回りがほぼ横ばいで推移している中、英10年物国債利回りは7bp低下し、主要国で唯一、投資収益がプラスになっている。
ただ、英国債相場を支えている一時的要因はいずれ消え去るだろう。
BOEは、国民投票による経済へのショックに対応した大型刺激策の一環である国債買い入れを完了した。
また、海外中銀や政府系ファンドは昨年末、通貨安によって価格が下がったポンド資産を買い増したが、今年1月のデータではその流れも反転したようだ。
年金基金も最近の大きな買い手だが、これらの基金は例年、年度末に余剰資金を英国債に振り向ける傾向がある。
ソシエテ・ジェネラルの金利ストラテジスト、ジェイソン・シンプソン氏は「BOEが国債買い入れを終了した上、第1・四半期末はすぐそこ、つまり年金基金の買いは細る可能性がある。つまり英長期国債の価格は下がりやすくなっているようだ」と話した。
(Dhara Ranasinghe、Andy Bruce記者)