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アングル:トヨタがEV開発に本腰、中国の動きなどで戦略転換

2017年04月21日(金)15時25分

 4月19日、トヨタ自動車はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。写真は同社RAV4のEV車。米カリフォルニア州で2011年9月撮影(2017年 ロイター/Lucy Nicholson)

[上海 19日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>はこれまでの開発戦略を180度転換し、電気自動車(EV)開発に本腰を入れざるを得なくなっている。業界内で次世代自動車の主力はEVとの見方が強まる一方であることに加え、中国の政策に背中を押された形だ。

ごく最近までトヨタは、電気のみで走行する100%EVに背を向け、次世代車として水素式の燃料電池車(FCV)開発を積極的に進めていた。2013年、ガソリンと電気のハイブリッド車「プリウス」の生みの親の内山田竹志会長は、水素電池車は従来の燃焼エンジンに対する「実際的な代替役」だと語り、EVが使われるとしても近距離用に限定されるとの見通しを示した。

同社はモーター搭載式のハイブリッド車とプラグインハイブリッド車(PHV)が水素電池車への橋渡し的存在になると予想。14年にはついに初の水素電池車「MIRAI」の販売を開始した。

ところが昨年末、長距離走行可能な100%EVの開発を始めると表明し、豊田章男社長直々に指揮を執る新部門を立ち上げた。業界専門家によると、2020年ごろには販売にこぎ着けるはずだという。

あるトヨタ役員はこうした方針変更について「苦渋に満ち、胸が痛む」と表現している。

トヨタに姿勢を変えさせた大きな要因は、世界最大の市場である中国にある。同国政府はクリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた厳しい燃費基準導入を計画しつつあり、世界の大手メーカーは試練にさらされている。

昨年9月に公表された当局の提案では、各メーカーに販売台数の8%を来年までにEVないしPHVとするよう義務付けた。この比率は2019年に10%、20年には12%まで高められる。

業界側の働きかけでクリーンエネルギー自動車に関する販売義務の比率やペースは多少修正されるかもしれないが、トヨタを始め各メーカーは中国が20年までにEVを本格的に市場に普及させようとする基本的な流れは続くとみている。

ただトヨタにとってこれは死活問題になりかねない、と別の役員は懸念を示した。中国の提案によると、プリウスのようなモーター式ハイブリッド車はガソリン車と同等に扱われ、厳格な燃費基準達成のために利用できる「新EVクレジット」を稼ぎ出してくれない。

トヨタの大西弘致中国本部長は18日、「中国の見解ではプリウスはガソリン車と変わらないので、われわれはアレルギーを克服して電気自動車を考え出すしか道はない」と述べ、来年には中国でPHV販売を始める方針を明らかにした。いずれは100%EVの販売も目指すとしながらも、その具体的な時期は示していない。

(Norihiko Shirouzu記者)

ロイター
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