コラム

アマゾンついにリアル市場へ 日本での提携先を大胆予想 !

2017年06月19日(月)17時23分

Pixfly-iStock.

<全ての消費市場を狙うかのごとく、アマゾンが大きく動いた。日本でリアル店舗に進出するのも遠い未来ではない?>

米アマゾンが米国の高級スーパーを買収すると発表し、市場は騒然となっている。いよいよアマゾンが本格的にリアル店舗に進出してくるわけだが、この動きはいずれ日本にも波及する可能性が高い。高級スーパーを買収したアマゾンの狙いはどこにあるのだろうか。また、日本においてアマゾンがリアル店舗に進出するとしたら、どこと組むのがベストだろうか。大胆に予想してみた。

アマゾンとしては過去最大級の買収

米アマゾンは16日、高級食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」を買収すると発表した。買収価格は137億ドル(約1兆5000億円)で、全額を現金で支払う。発表前日のホールフーズの時価総額は106億ドルだったので、約3割のプレミアムを乗せたことになる。

アマゾンは会計上の利益をあまり出さない会社だが、潤沢なキャッシュフローがあり(2016年度の営業キャッシュフローは約164億ドル)、これを積極的に先行投資に回してきた。とはいえ2017年3月末時点における同社の現金保有額は154億ドル、有価証券は60億ドルなので、今回の買収は財務的に見るとそれなりのインパクトになる。買収額としても過去最高であることを考えるとアマゾンの本気度がうかがえる。

ではアマゾンはホールフーズの買収で何を狙っているのだろうか。ホールフーズは、高級スーパーとして知られており、米国を中心に460ほどの店舗を構えている。直近の売上高は157億ドル(約1兆7000億円)と、日本人の感覚からするとそれなりの大手に見える。だが、米国の消費市場はケタが違っており、同社はウォルマートのような巨大スーパーというわけではない(ウォルマートの国内売上高は何と33兆円に達する)。

ホールフーズは、所得が高く、食に対する意識のある顧客層を抱えた個性的なスーパーであり、これは既存のアマゾンの顧客層とかなりの部分で一致するだろう。

アマゾンは近年、アマゾンフレッシュなど生鮮食料品に力を入れている。これまでネット通販はロングテール(販売機会が少ない商品でも数を揃えることで販売総量を増やせるという理論)という言葉に代表されるように、ニッチな分野を中心に市場開拓を進めてきた。

【参考記事】ローソン不振の原因は経営者か親会社か
【参考記事】アマゾンがコンビニ進出! Amazon Goは小売店の概念を180度変える

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story