コラム

トヨタが抱える憂鬱と希望 淘汰の時代に立ち向かう術とは

2017年08月15日(火)12時00分

トヨタはグループ内に、アイシン精機、曙ブレーキ工業、デンソーなど技術力の高い部品メーカーを多数抱えている。こうした強固なグループ戦略がトヨタの強みだったが、EVシフトが進んだ場合、逆に弱みになる可能性も出てくる。しかも困ったことに、各グループ会社は安定株主対策で株式を相互に持ち合っており、これがトヨタの資本政策を困難にしている。

2015年に、トヨタが事実上の元本保証となるAA型種類株式を個人投資家向けに発行したのも、こうしたグループ会社に代わる安定株主を確保するためである。

幸いトヨタには他社にはない圧倒的な財務力があり、ひとたび決断すれば、一気に新戦略を推し進めることができる。しかも現在のトップは、サラリーマン社長ではなく創業家出身の豊田章男氏である。トヨタはバブル以降としては最大の岐路に差し掛かっており、場合によっては極めて重大な決断が必要となるかもしれない。このタイミングで創業家に「大政奉還」できていたことの意味は大きいはずだ。

【参考記事】ボルボが2年で全車種EVシフト 背景に中国メーカー
【参考記事】燃料電池車はテスラに勝てるか

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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