コラム

大幅なマイナス成長の日本、生き残りへの選択肢は2つしかない

2020年03月06日(金)11時40分

日本は既に輸出立国から消費立国へのシフトが進んでおり、法人税や所得税で財源を確保する国ではなくなっている。もともと消費税は、景気に左右されにくく、社会保障の財源として最適な税であるとの認識が一般的で、1989年に初めて導入された際も、増大する社会保障費に対応することが目的だった。どういうわけかこうした経緯は無視され、最近では感情的な議論ばかりが行われている。

本来なら社会保障改革を前倒しで進め、給付を抑制するとともに、消費主導で経済が回るよう産業構造の転換を図るべきだったが、政府はもちろん企業や国民も現状維持を最優先し、その間に事態はさらに悪化してしまった。

今からでも、ある程度の痛みを受け入れる覚悟があれば産業構造の転換は可能だが、これが効果を発揮するまでには時間がかかる。短期的には社会保障費の大幅カットか、景気を犠牲にした消費増税しか選択肢がない状態であり、私たちは重大な決断を迫られている。最大の懸案事項はこの事実をストレートに国民に伝え、選択を促す覚悟を持ったリーダーが存在しないことである。

<本誌2020年3月3日号掲載>

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2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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