コラム

「消費減税」論者は注目すべし 菅首相の通話料値下げで分かること

2020年10月01日(木)12時12分

消費税を減税するには法改正が必要となるので、実現のハードルが極めて高い。しかも、一旦引き下げて、あまり効果がなかった場合、その後の経済・財政運営は極めて難しくなる。だが、通信料金の引き下げは、場合によっては行政指導レベルで済むため、圧倒的に手続きが簡便であり、しかも消費減税効果がどの程度なのか予行演習できる。

筆者は政府が民間企業の経営に介入することについて、あまり賛成する立場ではないが、消費減税の効果を実体経済で試せるという点では、この施策を行う価値はあると考えている。通信料金の4割削減で消費が大幅に拡大すれば、減税による経済成長という議論が一気に活性化するだろうし、仮にほとんど効果がなかった場合には、減税で成長を実現するという話は幻想だったことが明らかとなる。

もっとも携帯電話会社の業績が大幅に落ちると、株価下落や配当減少などにより公的年金の運用にも悪影響が及ぶ。引き下げの副作用については、十分なコンセンサスを得ておく必要があるだろう。

<本誌2020年10月6日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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