コラム

中国TVの「日本の汚染食品が流入!」告発は無視できない重大事

2017年03月16日(木)17時48分

CCTV『315晩会』より

<「放射能汚染」を理由に輸入禁止にしている福島県など10都県の食品が中国で大量に販売されていると、CCTVの人気特番『315晩会』が槍玉に挙げた。影響の大きい政治的な番組だけに、積極的な対応が必要だ>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。今回は残念な話をお伝えしなければならない。中国の『315晩会』で日本の食品が槍玉に挙げられたのだ。

中国中央電視台(CCTV)は毎年3月15日の「世界消費者権利デー」に『315晩会』という特別番組を放送している。消費者に被害を与える悪徳企業を次々と名指しで批判するという内容で、中国で非常に人気がある番組だ。

【参考記事】アップルも撃沈させた中国一恐ろしいテレビ特番、今年の被害者は?

今年は(つまり昨日だが)、ネット百科事典の互動百科や国際的スポーツブランドのナイキなどが槍玉に挙がったが、そのひとつとしてなんと、日本産食品が標的になった。番組の内容を簡単に紹介しよう。

2011年の福島第一原発事故を受け、中国政府は福島県、群馬県、栃木県、茨城県、宮城県、山形県、新潟県、長野県、山梨県、埼玉県、東京都、千葉県の12都県で製造・生産された食品、農作物、飼料の輸入を禁止し、これは今も続いている(現在は山形県、山梨県を除く10都県)。「放射能汚染地域」だから、というわけだ。

ところが中国には現に、大量の食品が日本から流れ込んでいるではないか。カルビーの「フルグラ」など人気商品も含まれているほか、無印良品など大手チェーンでも日本産食品が流通している。

また、最近人気の越境ECでも大量に販売されていることがわかった。取り扱うネットショップの数は1万3000を超えた。日本語のパッケージには製造者の住所が記されているだけで、実際の製造地までは記載されておらず、消費者は真実の情報を知ることができない。番組が当局に通報したところ問題を把握し、今後摘発に強化を入れると約束した。

――とまあこういう内容だ。報道を受け、中国のネットショップからは番組で取り上げられた日本産食品が消えつつある。

中国当局が10都県で製造・生産された食品、農作物の輸入禁止を指示していることは事実であり、中国での販売は法令違反にあたる。だが、この規制自体が原発事故直後に設けられたものであり、現実に即した取り決めでないことは明らかだ。

ある中国のブロガーは世界主要都市で検出された放射線量のグラフを取り上げているが、東京の放射線量は北京市以下だ。東京の前にまず北京市の食品を取り締まったほうがいいという話になってしまう。

そもそも越境ECは3年前から人気で、大量の日本産食品が中国に流入している。本当に危険だというならば、CCTVはなぜこれまで追及してこなかったのか。3年間も危険を見過ごしてきたCCTVこそ、職務怠慢企業として『315晩会』で取り上げるべきかもしれない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story