最新記事

アップル

ジョブズ型経営を捨てろ

2014年11月18日(火)15時33分
ケビン・メイニー

大躍進の秘訣は反抗心

 ゲイツは00年に友人のスティーブ・バルマーにCEOの座を譲った。その前年、マイクロソフトの株式時価総額は世界中の企業の中で史上最高を記録していた。
それほど成功している会社をつくり直す必要はない。バルマーは手堅く伝統を守った。そして、この場合も情報技術は進化し、マイクロソフトはリーダーになり損ねた。株価は00年に下落。以後は低迷を続け、今年就任した3代目のCEOの下でわずかに上がった程度だった。

 この2社と明暗を分けたのがIBMだ。ワトソンSr.はコンピューター業界の生みの親だったと言っていい。50年代には競合他社がすべて結集しても、IBMにはとても太刀打ちできなかった。その後を継いだ息子は父親をはるかにしのぐ経営手腕を発揮した。

 ワトソンJr.がCEOを務めた56〜71年にIBMの従業員は4倍に増え、売上高は9倍以上増加。2代目最後の年にはIBM株は驚異的な高値を付け、時価総額はダウ平均の構成銘柄30社のうちの21社の時価総額の合計に匹敵するほどだった。

 IBMの継承はマイクロソフト、インテルとどこが違ったのか。息子は父親に反抗するのが世の常だ。ワトソンJr.は父親のやり方を踏襲せず、自分流の経営を貫いた。

 バレットとバルマーの場合と同様、ワトソンJr.が会社を継いだ当時は、業界全体が変革期を迎えていた。電磁開閉器を使った動作の遅いマシンから、真空管、さらにはトランジスタを使ったコンピューターが登場。ワトソンJr.はこうした技術革新の波に乗って、父親が築いた伝統とたもとを分かち、新時代のリーダーを目指した。

 では、アップルの代替わりはこの2つのタイプのどちらに近いだろう。クックは新製品のプレゼンテーションの仕方までジョブズをそっくりまねている。ジョブズを敬愛してやまないからだ。もちろん、それは結構なことだ。しかし、どんなに頑張ってもクックはクックでしかなく、ジョブズにはなれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎

ワールド

英裁判所、アサンジ被告の不服申し立て認める 米への

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏の逮捕状請求 ガザ戦犯容疑 ハ

ワールド

ウクライナ、北東部国境の町の6割を死守 激しい市街
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中