最新記事

アパレル

米国アパレルで閉店・倒産の嵐、生き残る3つの「新カテゴリー」

2017年9月15日(金)16時15分
山田敏夫(ファクトリエ代表)※東洋経済オンラインより転載

2016年末に破産保護を申請し、全店舗を閉めたアメリカンアパレル。日本と同様、アメリカのアパレル業界にも不況の波が押し寄せています Carlo Allegri-REUTERS

ここ1年、アメリカの有名ファッションブランドには立て続けに異変が起こっています。

2016年末には、カジュアルウエアブランド「アメリカンアパレル(American Apparel)」が破産保護を申告し、世界中に110ある店舗すべてを閉店させました。今年の年明けには、女性下着の「ビクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)」などを傘下に持つアメリカ大手アパレルチェーンの「ザ・リミテッド(THE LIMITED)」(※)が、日本の民事再生法にあたる破産法の適用を申請し、42州に展開していた約250店舗が閉店しました。

破産2社の共通点は「安さをウリにしていたこと」

アメリカを代表するブランドの破産が相次いでいる裏側では、いったい何が起こっているのでしょうか。

破産した2社の共通点は、低価格を売りにしてきたブランドであることです。日本と同様、アメリカのアパレル企業でも生産拠点を海外に移して原価を下げ、低価格で売るのがスタンダードであり、私が今年政府関係者から聞いた話によると、「アメリカでもアパレルの国内生産比率は3%を切っている」ということです。(※)安さを武器にすることは、規模の経済で勝負するということであり、巨大な資本を持つファストファッションにはとても太刀打ちできません。この2件の倒産は、"安売りの限界"を象徴しており、低価格ブランドがファストファッションの波にのみ込まれていく風潮は、今後も続いていくでしょう。

ただ、不振にあえいでいるのは、低価格ブランドにとどまりません。デザイナーズブランドやセレクトショップも同様です。ハリウッドのセレブリティから支持を得ている「ビーシービージーマックスアズリア(BCBGMAXAZRIA)」は、アメリカで展開する約180店舗のうち、120店舗を撤退。ルイ・ヴィトンのデザイナーであるマーク・ジェイコブズが手掛けるブランド「マークジェイコブズ(MARC JACOBS)」も、2017年の秋冬シーズンでメンズ製品の取り扱いを終了しました。

近年の西海岸ブームを牽引してきたライフスタイル複合セレクトショップ「フレッド・シーガル(Fred Segal)」を運営するMFSJは、今年の8月をもって同事業を終了。同じく西海岸をコンセプトにした「ロンハーマン(Ron Herman)」のロサンゼルス店に先日足を運んだところ、週末にもかかわらず、店内は閑散としていました。西海岸ブームの最盛期は、どうやら過ぎ去りつつあるようです。

※ザ・リミテッド社傘下にあるブランド名を「ビクトリアズ・シークレット」と表記していましたが、これは誤りでした。また、アメリカン・アパレルの生産国に関する記述(私が今年政府関係者から聞いた話によると、「アメリカでもアパレルの国内生産比率は3%を切っている」ということです)も誤りでした。以上の記述部分を削除します。(2017年9月22日)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、台湾新総統就任控え威圧強める 接続水域近くで

ワールド

米財務省、オーストリア大手銀に警告 ロシアとの取引

ビジネス

MUFG、今期純利益1兆5000億円を計画 市場予

ビジネス

焦点:マスク氏のスペースX、納入業者に支払い遅延 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中