最新記事

日本企業

復活タカラトミー、「立役者」が突如辞任し市場に募る不安

2017年11月25日(土)11時20分
渡辺拓未(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

メイ社長は次々に改革を断行

メイ氏は次々と挽回策を打ち出した。利益率の低い商品からの撤退を促し、現地任せだった海外の経営管理は、日本で直接行う体制に変更。欧米拠点では人員削減も敢行するなど、黒字化を目指した改革を断行した。その結果、2017年4~9月期には欧米地域で9000万円の営業利益を出し、黒字転換を果たした。

国内事業にもテコ入れした。トミカやリカちゃん、プラレールといった定番商品では、幼少期に遊んだ経験のある大人向け商品を強化したほか、服や靴、バッグ、文具といったライセンス商品の展開も新たに始めた。新商品開発では、先述のベイブレードバーストやスナックワールドを最重点商品に位置づけ、開発人員を集中させ、積極的な広告宣伝を行いヒットにつなげた。

toyokeizai171125-3.jpg

コマ同士を戦わせる玩具「ベイブレードバースト」は国内外で売れ行き好調だ(写真:タカラトミー)

一連の改革が実を結び始めたのを受け、メイ氏は「自分の役割を達成することができた」として辞任を決めたとみられる。ただ、今後のタカラトミーの経営は決して簡単ではない。黒字化した海外も依然として利益水準は低く、舵取り次第では再び赤字に転落する可能性もある。収益柱の国内も少子化の影響で玩具市場は縮小が止まらない。

来年から社長としてタカラトミーを取り仕切る小島氏は、メイ氏と同じく社外の出身。三菱商事とその傘下の投資会社・丸の内キャピタルを経て、2009年にタカラトミーの社外取締役に就任。2013年からCFO(最高財務責任者)を務めてきた。

10日の決算説明会では、「消費者の情報収集の仕方がEコマース(ネット通販)やSNSの普及で大きく変わった。そうした変化に対応しながら、グローバル企業としての土台を作っていくのが私の使命だ」と決意を語った。

ただ、メイ氏の突然の辞任に対する市場の動揺は今でも収まっていない。説明会後も株価下落が続いているのはその表れだろう。早急に新体制の詳細な経営方針を示し、不安を払しょくすることが求められそうだ。

toyokeizai171125-4.jpg

11月10日の決算説明会では小島一洋・次期社長が登壇した(撮影:今井康一)

タカラトミーの会社概要は「四季報オンライン」で

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、4月は49.4 1年4カ

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中