最新記事

日本経済

東京五輪中止の日本経済への打撃限定的、中小企業は売上高5%超下落か=IMF幹部

2021年4月14日(水)09時44分

国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のオッドパー・ブレック副局長は、東京オリンピック(五輪)の中止や延期は日本経済にそれほど打撃を与えることはないが、悪影響が大きい中小企業に的を絞った政府による支援が必要になる可能性があるとの見方を示した(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のオッドパー・ブレック副局長は、東京オリンピック(五輪)の中止や延期は日本経済にそれほど打撃を与えることはないが、悪影響が大きい中小企業に的を絞った政府による支援が必要になる可能性があるとの見方を示した。

同副局長は13日の書面インタビューで、「日本は経済規模が大きく多様性もあることから、オリンピックの計画が変更されても、短期的な成長見通しへの影響は総じて限定的だ」と述べた。

オリンピックに必要なインフラの大半はすでに整備されており、インバウンド観光がなくなることの成長への打撃は小さいと指摘。その上で「中止された場合、東京のサービス部門、特に中小企業に過度の影響を与えることに留意すべきだ」と語った。

調査に基づく分析によると、オリンピック中止によりこれらの企業は売上高の伸びが5%以上押し下げられる可能性があり、政府による支援が必要となる可能性があるとの見方を示した。

IMFは今月発表した世界経済見通しで、今年の日本の成長率予想を3.3%に引き上げた。堅調な輸出と大規模な財政出動が成長を下支えすると見込んだ。

副局長は「全ての国と同様、日本の成長見通しには、国内外の新型コロナの状況やワクチン接種を巡る不透明感に起因する著しい下振れリスクが伴う」と述べた。

日銀の政策点検については、緩和長期化のコストに取り組むための「正しい方向への一歩」として歓迎。一方で、新型コロナウィルスのパンデミックと金融緩和の影響を弱める低い潜在成長率により、インフレは中期的に2%を下回るだろうと指摘。

「持続可能な経済成長と2%のインフレ目標達成に向け、金融、財政、構造、規制緩和などの総合的な経済政策がどう作用するか、より広範な評価が将来的にはおそらく必要になる」と述べた。

日銀は3月、マイナス金利を深掘りした場合の副作用軽減対策を新設したが、ブレック副局長は日銀が深掘りする可能性は低いとし、「このスキームは、日銀がマイナス金利深掘りの準備ができていることを示唆しており、それ自体がフォワードガイダンスの一助を表している。しかしデフレ圧力が強まらない限り、近い将来に金利が引き下げられることはない」と語った。


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸

ビジネス

大和証G、26年度までの年間配当下限を44円に設定

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ弾道ミサイル発射=韓国軍

ワールド

ロシア、対西側外交は危機管理モード─外務次官=タス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中