最新記事

日本企業

東芝社長交代劇、CVC提案前に車谷氏の進退問う動き お家騒動の裏側は?

2021年4月15日(木)08時41分

買収案巡り混迷

CVCの今後の動向は見通しにくい。永山氏は会見で「(車谷氏の辞任を受けてCVCが)どういう考え方をするか、こちらにはわからない」と述べた。 CVCが正式提案した場合、原子力や防衛関連事業のある東芝は外為法に基づく事前審査の対象となる。関係筋によると、東芝社内では非上場化の提案を「会社存続の危機」と受け止め、幹部が経産省など関係省庁にCVC案に対する会社側の消極的なスタンスを説明している。

CVCによる買収の初期提案を踏まえ、株主からの注文も相次いでいる。ファラロン・キャピタル・マネジメントは12日、東芝が他の潜在的な買収者による対抗案を提示する機会を確保した上で、対抗案も含めて検討すべきとの考えを表明。香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは13日、CVC案の1株5000円は安すぎるとし、6200円以上が適当だとする声明を発表した。

東芝に対する買収提案は、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やカナダの投資会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントが対抗案を検討する動きが報じられており、車谷氏の後任として再登板することとなった綱川智社長は、こうした潜在的な買収者とも向き合う必要がありそうだ。

綱川氏は昨年の定時総会で再任への賛成割合が90.1%と高く「株主はじめステークホルダーの信頼も厚く、社長として困難を乗り切った経験がある。後任として最適」と永山氏は説明。今後の外部との交渉役として手腕が期待される。

急速な事業環境の変化が起きている中で「マネジメントも新陳代謝が求められる」(綱川氏)側面もある。ただ、東芝社内からは「すぐに社長交代できるような別の人材がいない。かといって、今回の辞任劇を踏まえると外部からの登用も容易ではなさそうだ」との声も漏れ聞こえている。

(山崎牧子、平田紀之、梅川崇、編集:田中志保、石田仁志)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中