最新記事

SDGs

ダイキンに学ぶ、事業成長とSDGs達成の両立──カギは「サブスク」と「スタートアップ」

GROWTH, SDGS, AND SUSTAINABILITY

2023年3月15日(水)14時20分
大橋 希(本誌記者)
SDGs

BILLION PHOTOS/SHUTTERSTOCK

<世界が持続可能な成長をするためには経営とSDGsの両立が欠かせない。技術力とアイデアで環境負荷軽減を目指す空調大手ダイキンのチャレンジ>

今や世界中の企業にとって、経営戦略に取り込むことが必須となったSDGs(持続可能な開発目標)。2030年までに達成すべき17の目標は貧困撲滅からジェンダー平等、技術革新まで幅広く、途上国も先進国も課題に取り組むことが求められている。

15年にSDGsを採択した国連は毎年、世界各国の目標達成度を発表しているが、22年ランキングで上位を占めたのは1位フィンランド、2位デンマーク、3位スウェーデンといずれも北欧諸国だ。日本は163カ国中19位と悪くないが、「ジェンダー平等」「つくる責任、つかう責任」「気候変動対策」など6つの目標で最低評価(「深刻な課題がある」)を付けられている。

持続可能な未来を考えるとき、緊急度が高いのは気候変動対策だろう。その要となるのが温室効果ガスの削減。この問題にさまざまな観点から取り組んでいるのが、170以上の国・地域で事業を展開するグローバル企業で、エアコンなど空調機の売上高で世界トップのダイキン工業だ。

冷媒の確実な回収目指し

人々の暮らしに欠かせないエアコンだが、全世界の電力の1割を使用しているといわれ、結果的に多くの二酸化炭素(CO2)を排出している。また、エアコンに使われる冷媒(代替フロン)にはCO2の数百~数千倍もの温室効果がある。

電力消費の抑制という課題に、ダイキンは省エネ技術の推進で答える。モーターの回転速度を制御するインバーター技術、空気中の熱を集めて移動させるヒートポンプ技術――日本では一般的だが海外ではまだまだという技術を広く普及させることで、CO2削減を目指す。

230321p18_LED_05.jpg

欧州(写真)などでも冷媒回収を推進している COURTESY DAIKIN

冷媒に関して重点を置くのは再生・回収率の向上だ。16年のモントリオール議定書キガリ改正(現在148カ国が批准)で温暖化対策の一環として、代替フロンの生産・消費量の削減が義務付けられた。これにより将来、冷媒が不足することも考えられ、「環境影響の少ない冷媒に切り替えること」「冷媒をきちんと回収して再生すること」を業界は迫られている。

現在、国内における業務用空調機の冷媒の回収率は40%ほどとされており(それでも世界トップレベルだが)、それを究極的には100%に上げたいとダイキンは考えている。ハードルは非常に高いが、「エアコン本体と冷媒の両方を生産する、世界で唯一の企業として大きな使命感を持っている」と、コーポレートコミュニケーション室広報グループの安部貴史は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中