最新記事
米自動車

もう車が買えなくなったアメリカ人──年収10万ドルの壁

Americans can no longer afford their cars

2024年1月16日(火)16時35分
ジュリア・カルボナーロ
カリフォルニアのフォード・ディーラー

古き良き時代──星条旗を立てたトラックがズラリ(2009年、カリフォルニアのフォード・ディーラーで) REUTERS/Mike Blake

<アメリカンライフの象徴だった車だが、富裕層に引っ張られて価格が高騰したばかりでなく、そもそも「高級でない車」が市場から消えた。もはや人口の8割が車に手が届かない状況だ>

車を所有することは昔から、アメリカ式ライフスタイルの象徴で、車は必要なだけでなく、自由や自立、そして時には抵抗のシンボルとなってきた。だが2024年には、アメリカと車の蜜月関係が終わるかもしれない。多くのアメリカ人が車を買えなくなっているからだ。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、生活費は全体的に高騰しており、車にかかる諸費用や自動車保険、修理費用なども上がっている。

パンデミック中、自動車業界はサプライチェーンの混乱や半導体不足などの問題に見舞われ、新車価格も中古車価格も史上最高にまで高騰した。車の購入をサポートするAIアプリ「CoPilot」のデータによれば、2020年以降、新車価格は30%、中古車価格は38%高騰している。


物価上昇率が減速した2023年には、新車価格はわずか1%の上昇で平均5万364ドル、中古車価格は2%下落して平均3万1030ドルになった。

それでも多くのアメリカ人にとって、車がきわめて高価なものである現状は変わらない。CoPilotによれば、現在販売されている車で価格が3万ドルを下回るのは、全体のわずか10%。中古車市場でも、2万ドルを下回るものは全体の28%にすぎない。

車を買うのに必要な年収は10万ドル

金融関連ニュースサイト「MarketWatch(マーケットウォッチ)」の2023年10月のリポートによれば、アメリカ人が車を買うのに必要な年収は最低で10万ドルだ。

これを国際調査のデータに照らせば、アメリカの世帯の60%が「新車を買えない」状態にある。世帯ではなく個人ベースで見ると状況はもっと悪い。全体の82%が、年収10万ドルに満たないのだ。

CoPilonのパット・ライアンCEO(最高経営責任者)は本誌に対して、「とりわけ家計が苦しい消費者にとって、2023年は車を購入するのがきわめて困難な年だったことは確かだ」と語った。

「経済的に余裕のある人々がけん引する形で春には自動車価格が高騰し、それが完全に元の水準には戻らなかった。ほとんどのブランドや車種で、価格は年初以来ほとんど変化がなく、複数回にわたって利上げがあったことも考慮に入れると、車を購入する人々にとってお得な取引はあまりなかったと言えるだろう」

自動車情報サイト「エドマンズ」のアナリストであるジョセフ・ユンは本誌に対して、「平たく言えば、車が以前よりも高くなっているということだ」と述べ、さらにこう指摘した。「2019年11月には、新車の平均取引価格は3万8500ドルだったが、2023年11月にはこれが4万7939ドルに跳ね上がっている」

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 10

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中