最新記事
ASEAN

シンガポール公演のみだった「テイラー・スウィフト東南アジアツアー」の怪...「裏取引」にASEAN諸国が猛反発

Why No Taylor Here?

2024年3月4日(月)13時25分
セバスチャン・ストランジオ(ディプロマット誌東南アジア担当エディター)
テイラー・スウィフト

スウィフトの公演は開催地にとってカネのなる木(ブエノスアイレス、昨年11月) AP/AFLO

<世界的歌姫のツアーによる巨大な経済効果をめぐって、ASEAN域内対立が勃発>

シンガポールは、米ポップ歌手テイラー・スウィフトの公演をめぐって「独占契約」を結んだのか──。

スウィフトは開催中の世界ツアー「ジ・エラス・ツアー」の一環として、3月2日~9日にシンガポール国立競技場で6公演を行う。だが、東南アジアで公演先に選ばれたのはここだけ。そのため、域内各地のファンがシンガポールに足を運ぶことになる。

こうした事態を受けて、シンガポール政府観光局(STB)がほかの東南アジア諸国で公演を行わないという条件で、スウィフトの公演プロモーターであるAEGプレゼンツに補助金を提供したとの噂が持ち上がっている。

2月28日には、フィリピン下院歳入委員長を務めるジョーイ・サルセダ議員が、シンガポール側に説明を求めるよう外務省に要請する声明を発表した。

「良き近隣国がする行動」ではなく、ASEANの精神にそぐわないのではないかと、サルセダは声明で述べている。「見逃してはならない行為であり、正式に異議を唱えるべきだ。ASEANの設立理念である合意に基づく近隣関係や団結精神にも反する」

東南アジア公演はシンガポールのみと発表された際、特に落胆したのがタイのファンだ。タイで軍事クーデターが発生した2014年、スウィフトは同国で予定していた公演を中止した。それだけに今回は有力候補地のはずだった。

実際、STBとAEGの独占契約の噂の「出どころ」はタイのセター首相だ。

「シンガポール政府が(スウィフトの公演1回につき)200万~300万ドルの補助金を提供していると、AEGから聞いた」

報道によれば、セターは2月16日にタイの首都バンコクで開かれたビジネスフォーラムでそう発言した。「だがシンガポール政府は利口で、(東南)アジアでほかの公演をしないよう求めた」

驚異の集客力に熱視線

両者の取引を「知っていたらタイでの公演を実現させた。コンサートは経済に付加価値を創出することができる」とも、セターは語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産の今期営業益予想5.5%増、為替変動や生産性改

ワールド

プーチン氏「戦略部隊は常に戦闘準備態勢」、対独戦勝

ワールド

マレーシア中銀、金利据え置き インフレリスクや通貨

ワールド

中国軍艦、カンボジアなど寄港へ 米国は警戒強める可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中