最新記事

中国

「二次元経済」とは何か? 中国ビリビリマクロリンク取材記

2017年8月4日(金)21時32分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

また、メルセデス・ベンツ・アリーナに隣接する上海世博展覧館では「ビリビリワールド」が開催された。有名配信者やゲストによるミニライブやトークショーに加え、ゲーム体験コーナーがあり、ナイキ、テンセントマンガと有妖気(ともに中国の大手ウェブマンガ配信サイト)、そして日本のアニメイト(アニメグッズ販売店)などの企業ブースが並んだ。

目を引いたのは、アメリカの化粧品ブランド「メイベリンニューヨーク」のブース。コスプレイヤーのための化粧講座が人気を集めていた。アニメやマンガに由来する「二次元経済」とナイキ、メイベリンニューヨークではターゲット層が大きく異なるように思えるが、関係者によると若者層に絞ったブランディングができるという意味で、スポンサー案件の引き合いは多いという。

takaguchi170805-2.jpg

ビリビリワールドのメイベリンニューヨークのブース(筆者撮影)

実際に会場を歩いた体感では、参加者の過半数は10代の若者たち。たんにイベントを楽しむだけではなく、コスプレをして自ら主体的に楽しむ人の姿も目立った。会場の一角には一般参加者が思い思いのパフォーマンスを見せるフリースタイルコーナーがあり、企業ブースをしのぐ盛り上がりを見せていた。

私が見学した時には、アイドルオタクたちが無数のサイリウムを持って(爪のようにサイリウムを持つため、バルログと言うらしい)いわゆる"オタ芸"を披露していた。応援する相手がいないのにひたすらオタ芸を披露するさまはやや異様ではあったが、会場、そして配信サイト上でも大盛り上がりとなった(各ブースやライブの模様はすべてビリビリ動画で配信された)。

takaguchi170805-7.jpg

ビリビリワールドにて。バルログスタイルで応援する中国人(ビリビリ動画提供)

日本のコミケ(コミックマーケット)やアイドル・イベントのような一般ユーザーが積極的に関わることで楽しみを見いだすというスタイルは、従来の中国では主流ではなかった。かつては制作者と消費者の間には大きな壁があったのだが、新世代の中国人たちは新たな楽しみ方を受け入れているようだ。

日本的文脈を受け継いだ中国発「二次元」コンテンツへ

ビリビリ動画が日本文化の影響を色濃く受けていることがおわかりいただけただろうか。ビリビリワールドの会場には他にも、コミケ名物の"自宅警備員や"JOJOのコスプレをしている人がおり、さらには中国でも人気の日本のスマホゲーム「Fate/Grand Order」のブースがあるなど一目瞭然だった。

【参考記事】日本の映画館で『ワンピース』を英語・中国語字幕付きで上映する理由

takaguchi170805-3.jpg

ビリビリワールドにて。JOJOコスプレの入場客(筆者撮影)

takaguchi170805-4.jpg

ビリビリワールドの「Fate/Grand Order」ブース(筆者撮影)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国海洋石油の元幹部を調査、重大な規律違反疑いで当

ワールド

豪中銀、政策金利据え置き 物価上昇圧力を警戒

ワールド

パレスチナ国連加盟決議案、総会で10日採決の可能性

ワールド

米公的年金・メディケア、積立金枯渇見通し後ずれ 経
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中