最新記事

中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃

TikTokは既に「女子高生アプリではない」、自撮りできない世代も使い始めた

2018年12月20日(木)17時30分
高口康太(ジャーナリスト)

――私もTikTokを試したが難しい。

難しい。逆に(若い人たちは)みんなすごいなと思っている。

ただ、1つ言えるのは、年齢層によって使い方がちょっと違うという点だ。10代、20代ぐらいだと、セルフィーが中心。インカメラで自分を撮って、加工する。これが30代、40代、特に50代になると、アウトカメラで撮影する。この傾向は中国とも共通している。

いま少しずつ流行しつつあるのは、美しいものや美味しいもの、ペットなどをアウトカメラで撮影すること。TikTokは必ずしもセルフィーでなくてもいい。観光地を撮って、こんなにキレイなところに来たと音楽を付けて公開する。美味しいレストランに来て、これはすごく美味しそう、と。こういう動画でもいい。世代によって撮り方の傾向は明らかに異なっている。

(年齢層の広がりとともに)TikTokの動画ジャンルは増えている。セルフィー、踊り、お笑い、メイク、ファッション中心だったところから、ペットやグルメ、観光、風景などを撮る動きが広がっている。

――インスタグラムも当初は若い世代中心のアプリだったが、次第に年齢層を広げていった。同様の進化を考えているのか。

老若男女に使ってもらえれば嬉しい。誰でもクリエイターになれる、そのクリエイティブをみんなでシェアできる。この喜びは若い人に限ったことではない。

あるテレビ番組で、TikTokに関する街頭インタビューをしていたが、「夫婦でTikTokをやっている」「子供を撮っている」という声が紹介されていた。その番組を見ても、(年齢層は)上がってきていると実感している。

私たちの中では、いわゆる女子高生アプリはとっくに卒業している。もし女子高生だけが使っている状況ならば、現状のようにアプリランキングの1位にはなれなかったはずだ。

――最後に。いま最も勢いのある企業に勤められているわけだが、井藤本部長が感じたバイトダンスの面白さはどこにあるか。

毎日駆け足で、振り返っている時間がないのが本音だ。先ほど言った2カ月ごとの目標設定も経験したことがない。TikTokの日本での広がり方も速い。前職では映画や音楽など、いろいろなヒットに関わってきが、こんなに速く、瞬時に、ヒットやバズが起きる経験はなかった。毎日必死になって走って、(事態に)追いついている状況だ。

高口さんもご存じの通り、中国のIT企業はすごく「若い」。バイトダンスも平均年齢は20代だろう。若くてエネルギーがあるので、みんな本当によく働く。今までアメリカ人やアジア人、ヨーロッパ人、日本人と働いてきたが、こんなにみんながみんな、がむしゃらに働く会社は初めてだ。

深夜にLINEが届いたり、メッセージが来たり......。東京は週休2日だが、中国本社は隔週で日曜日が勤務日になっている。中国のIT会社だと珍しくない制度だが。私は休みでも、彼らは働いているので日曜日にもメッセージがどんどん飛んでくる(笑)。

バイトダンス、そして他の中国の新興IT企業にも感じるのは、バイタリティやエネルギー、テンポ感だ。私が経験してきた伝統的な企業とはまったく違う。

※前編はこちら。

【関連記事】TikTokとドローンのDJIは「生まれながらの世界基準」企業

※12月25日号(12月18日発売)「中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃」特集はこちらからお買い求めになれます。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中