最新記事

中英関係

習近平主席訪英の思惑――「一帯一路」の終点

2015年10月19日(月)15時05分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

国賓待遇 習近平を迎える英王室とバッキンガム宮殿 Stefan Wermuth- REUTERS

 習近平国家主席が10月19日からイギリスを公式訪問する。中国の主たる狙いはTPPに対するAIIBと一帯一路の強化や人民元国際化ではあるものの、それ以外にイギリスを一帯一路の終点と位置づける思惑がある。

CCTV、キャメロン首相の単独取材を繰り返し報道

 中国の中央テレビ局CCTVは、イギリスのキャメロン首相を単独取材して、繰り返し報道している。

 キャメロン首相はつぎのように語っている。

●今回の習近平国家主席の訪英は、英中関係が最も良い時期に当たっている。私はこれを英中関係の「黄金時代」と呼んでいる。

●イギリスは世界各国に市場を開放しているが、中国が投資する先としては、EUのどの国よりもイギリスが最も適している。

●中国の経済は転換点に来ているが、しかし今後も成長を続けるであろうことを私は信じている。イギリスの対中貿易は過去10年の4倍になった。

●ロンドンでは、世界に先駆けて2014年10月から人民元建ての債券を発行するようになったが、イギリスは金融街として全世界を牽引していくことだろう。

●AIIB(アジアインフラ投資銀行)加盟にEUで最初に手を挙げたのはイギリスで、その後に他のEU諸国が続いた。

●これは決してアメリカとの衝突を意味しない。イギリスがAIIBに加盟したことは正しい選択であり、今後は経済貿易のみならず、文化や人的交流に関してももっと力を入れたい。現在イギリスにいる中国人留学生はすでに13万5千人を越えている。

●中国の対英インフラ投資は、より多くのイギリス人の雇用を生んでおり、英中双方がメリットを互いに享受している。これからはチャンスの時代。より多くのチャンスが待っている。

 CCTVはさらに、習近平国家主席の訪英中に、150件ほどの大型プロジェクトをイギリスと約束しているなどと報道した。

習近平の思惑――イギリスを「一帯一路」の終点に

 習近平がAIIBに関して「イギリスを落せる」と計算したのは、チベット仏教のダライ・ラマ14世に関わる裏事情があったことは今年3月2日の本コラム「ウィリアム王子訪中――中国の思惑は?」で触れた。一種の「脅迫」にも似た形でイギリスが加盟したあと、日米などを除くG7の切り崩しに成功している。

 中国にとってAIIBと一帯一路(陸と海の新シルクロード)構想は、グローバル経済の中における中国の砦(とりで)のようなものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中