最新記事

ドイツ政治

メルケルを脅かす反移民政党が選挙で大躍進

難民危機で右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が先週末の地方選で3位に。今週末の選挙次第ではメルケルが危うい

2016年3月9日(水)17時30分
ジョシュ・ロウ

もう耐えられない 反移民を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のフラウケ・ペトリー党首(2月29日) Fabrizio Bensch-REUTERS

 重要な地方選挙を13日に控えたドイツで、「反移民」を掲げる政党が急速に勢いを増している。6日に行われた中部ヘッセン州の議会選で、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が3位につけたのだ。

 同党の躍進を、中道左派のアンゲラ・メルケル首相らドイツ政界の主流派は警戒感をもって注視していた。ラジオ局「ドイチュ・ウェレ」によれば、中間集計でAfDは13.2%を獲得。結果の確定は今週末になるが、同州議会の第3政党になる見込みだ。AfDが設立されたのは2013年。結党間もない新興の右派政党が、である。

 メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)は28.2%の票を獲得し、得票率28%の社会民主党(SPD)をわずかにかわして首位に。とはいえ、ウェルト紙によれば、2011年の地方選では33.7%だったからCDUの落ち込みは顕著だ。一方、緑の党も18.3%(2011年)から11.6%へと支持を落としている。

 13日に選挙が行われる、バーデン・ビュルテンベルクとラインラント・プファルツ、ザクセン・アンハルトの3州はいずれも重要州で、メルケル首相の信任を問うものになると見られている。

【参考記事】アメリカは孤立無援のメルケルを救え

「不法滞在者の追放から始める」

 AfDの急伸は、難民危機が原因だろう。2015年の1年でシリアなどから100万人を超える難民がドイツに到着した。同党のカリスマ的指導者であるフラウケ・ペトリー党首は今年1月、ドイツ国境を違法に超えようとする移民を排除するため、非常時には発砲も必要になると発言して物議を醸した人物。ユーロ懐疑論にルーツを持つ同党をうまく変容させ、大量の難民流入に対する国民の不満をうまく掴んだ。移民や難民に寛容で、リベラルの姿勢を強く打ち出しているメルケルとは対照的だ。

「まずは、国境を管理し、権利もないのにドイツに留まっている多くの人を国外退去させるところから取り組まなくてはならない」と、ペトリーは先週末、ロイターに語った。

【参考記事】ドイツを分断する難民の大波

 今週末に投票が迫る3州の世論調査によると、AfDの支持率はザクセン・アンハルト州で19%、バーデン・ビュルテンベルク州で13%、ラインラント・プファルツ州で9%になっている。いずれの州でも得票率が5%あれば議席を確保できる。

 ひとつ気になるのは、先週末のヘッセン州の選挙で、事前の世論調査よりもAfDの得票率が高かったことだろう。同州の中心都市フランクフルトでは、支持率6%という事前の世論調査結果もあったのに、実際には10%を獲得した。今週も、その繰り返しになるのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中