最新記事

ネット

フェイスブックのネットタワーが世界(とフェイスブック)をつなぐ

地上アンテナを使って途上国の接続環境を飛躍的に向上させるプロジェクト

2016年4月15日(金)16時00分
アンソニー・カスバートソン

FBタワー プロジェクト「ARIES」のタワーは低コストのネット通信を提供する FACEBOOK

 フェイスブックは、世界とインターネット(とフェイスブック)をつなぐ通信用アンテナを、途上国の都市部周辺で設置する計画を明らかにした。

 このプロジェクトは、今週開催されたフェイスブックの開発会議で公表された。フェイスブックはすでに、「Internet.org」という別のプロジェクトで低軌道衛星やレーザー搭載ドローンを使って地上とインターネットを接続する方法の開発を進めている。しかし今週マーク・ザッカ―バーグCEOが明らかにしたのは、もっと「地に足が着いた」プロジェクトだ。

【参考記事】フェイスブックが無人機会社を買収する狙い

 フェイスブックの推計によると、途上国に暮らす人口の97%は都市部から約40キロの範囲内で生活している。このデータを念頭に置いて、「テラグラフ」と「ARIES」という地上に設置するインターネット接続システムが開発された。Wi-Fi通信網が都市とその周辺地域をカバーできる。

世界とフェイスブックをつなぐ

 世界とフェイスブックを、いや失礼、インターネットをつなぐこの計画は、すでにインターネットとつながっている地域の通信速度や通信効率、ネット接続の全体的な質の向上も目指している。

 フェイスブックの技術担当副社長ジェイ・パリックは今週の会議で、「状況を少しだけ改善しようとは考えていない」と語っている。「これまでの10倍速いか10倍安いか、その両方を達成しようとしている」

【参考記事】フェイスブックの難民支援は慈善では済まない

「ARIES」は、ベースとなるタワーに96のアンテナを設置してより遠くまで無線と届けるシステムで、ケーブルや光ファイバーといった既存のインフラより大幅にコストを下げることができる。

 一方「テラグラフ」は、現存するインフラを活用して、都市部でのWi-Fiや携帯電話の通信を強化する。電灯や標識などの施設に200~250メートル毎にアンテナを設置し、高周波信号で大量のデータを送受信できる「WiGig」という技術を採用する。

 フェイスブックは今年中に「テラグラフ」の実地検証をカリフォルニア州サンノゼで実施する計画だ。

「テラグラフはネットワークの構造上、密集した都市部でよく発生する通信干渉(建造物や通信の渋滞)を回避することができる」と、フェイスブックの2人のエンジニアが個人ブログで説明している。

「フェイスブックは今後も協賛パートナーと共に計画への投資を継続する。世界中の複数の市場で大規模な試験ネットワークを構築して、最新技術による価値創造と効率向上の可能性を示したい」

 世界中が友達になる日も近い?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中