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インタビュー

ウェルビーイングでワークスタイルの質を高める

2016年5月26日(木)11時03分
WORKSIGHT

 最近の研究では、心身の健康度合いを測る指標として「ハピネス(幸福)」という言葉は使われなくなってきました。ハピネスからウェルビーイングへという具合に遷移してきたんです。なぜかというと、ある状態を幸福かどうか感じるものさしは遺伝で決まっている部分がありますし、周りの人にも影響されるからです。それに幸福度は高いか低いかのあいまいな基準でしかありません。

 ウェルビーイングは50項目ほどの多元的な要素で主観的・客観的に心身の満足度を測定できます。つまり極めて科学的な手法で自分なりのバランスを探っていこうとするものです。そして、平たく言えば朝ワクワクして目が覚めて、そして夜、満ち足りた気持ちで眠れるという、単純にそれだけを目指している。ごく単純なことだけれども、今の日本でできている人はすごく少ないと思います。

仕事のモチベーションは1つに絞った方がいい

 幸福の構成要素が「快楽」「没頭」「意味」の3つあると話しましたけど、これは仕事のモチベーションにも大きく関わります。気を付けたいのが、1つの仕事に複数の要素を持たせてしまうこと。例えば「快楽」と「意味」の両方を幸せととらえてしまう人もいます。そういう人はコンフリクトを起こすんです。

 自分はこの仕事に快楽を求めているのか、意味を求めているのか混乱して、モチベーションが低下してしまう。だから、仕事やフェーズによって自分の中で幸福の構成要素を分けないといけない。「この作業は純粋に楽しもう」とか「この作業は食べていくためにやるんだ」といった具合ですね。

 モチベーションのあり方は「内的」「外的」「内的と外的の両方」という3パターンがありますけど、パフォーマンスが一番低いのは「内的と外的の両方」を持っている人なんです。要は仕事に、報酬や意義、楽しさといった複数の要素を求める人が一番低いということ。次が「外的だけ」、一番いいのが「内的だけ」なんです。ほとんどの人は両方持っているので、そのコンフリクトで苦しんでしまう。

 ですから、業務によってモチベーションは1つに絞ってしまった方がいいんです。そうやって1つひとつの仕事、暮らしの細部を振り返ることがウェルビーイングの本質だと思います。

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日本のホワイトカラーの疲弊を改善、いかに知的生産性を上げていくか

 企業のウェルビーイング推進のコンサルティングのため、あちこちのオフィスを調査していますが、今ホワイトカラーの人はものすごく疲れているという印象です。特に日本のビジネスパーソンは疲れ果てている。欧米ではパフォーマンス向上とかリーダーシップ強化を目的として研修が行われているけれども、日本のワーカーはそれどころではない。いかに疲れず、イライラせず、遠くまで行けるかということを大事にしたいというのが本音ではないでしょうか。

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