最新記事

中国

オバマ大統領の広島訪問に対する中国の反応

2016年5月30日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

現職のアメリカ大統領として初めて広島を訪問したオバマ Carlos Barria- REUTERS

 交戦国同士が友好関係を継続し、戦勝国が敗戦国の犠牲者に祈りを捧げられるのは大きなことだ。そこには戦争への反省と平和への願いがある。しかし中国はひたすら非難の大合唱に終始している。その現状を見てみよう。

環球網:「安倍とオバマの政治パフォーマンス」

 中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹版、「環球時報」の電子版である「環球網」が「安倍とオバマの政治パフォーマンス」と題した記事を発信したことを、東方網など、数多くのウェブサイトが大々的に伝えている。

 最初に伝えたのは大陸系の香港メディア『大公報』(5月26日付け)のようだが、それを27日に環球網が転載したことから、大陸の多くのウェブサイトが「許可が出た」とばかりに、一斉に報じた形だ。

 それによれば「安倍は実に温厚でない。アメリカをしっかりと日本の右翼の戦車の上に縛りつけるために、まもなく下野するオバマから最後に奪い取れるものをいただき、オバマに残っているわずかな利用価値を搾り取っている」とのこと。

 さらに以下のような批判が続く(原文には敬称はないので、そのママ転載。中国語では一般に呼び捨てだ)。

●G7サミットは安倍とオバマが主人公で、他の首脳はわき役だ。ようやく日本でG7サミットを開くことができた安倍は、この機を逃さず、喜び勇んで政治的パフォーマンスを演じ続けた。

●では、どうやってオバマの利用価値を使いこなすか?それはオバマに広島を訪れさせることだ。オバマは単純だから、「核のない世界」という自分の主張を唱えるために、まんまと安倍の深慮遠謀の計算に乗っかってしまった。安倍は日本が「正常な国家」になることに腐心している。

●しかし、安倍がどんなに演技してみたところで、所詮はアメリカの弟分にすぎない。オバマの目から見れば、安倍は「死を恐れない兵隊」の一人で、「お先棒かつぎ」にすぎないのである。

●たとえば、南海(南シナ海)問題で、アメリカは当事者ではないのに、どの関係国よりも最も高く跳ね上がり、(中国に)挑戦している。そのアメリカに協力するために安倍はただおとなしくアメリカの指示に従うしかない。オバマが必要とするときには、安倍は真っ先に突撃して敵陣(中国)に突入するしかない。

●しかしオバマが安倍を必要としない時には、安倍にはいかなる自由もないのだ。たとえば、ロシア総統のプーチンとの会見。プーチンが訪日したいと言ってもアメリカが喜ばなければ訪日させることもできない。自分からモスクワに行くしかないのだ。いったいどこの国に、二度も続けて一方的に片方の首脳が相手国を連続して訪問することなどあろうか?国際社会では不平等で礼を失することとされている。安倍はオバマとの関係において、傀儡でしかなく、人格を喪失し、国家としての格を失ってしまっているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円下落、予想上回る米雇用コスト受けド

ビジネス

米国株式市場=下落、FOMCに注目

ビジネス

米アマゾン、第2四半期売上高見通し予想下回る

ビジネス

米コカ・コーラ、通期売上高見通し引き上げ 第1四半
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 9

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 10

    日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退──元IM…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中