最新記事

2016米大統領選

クリントンの私用メール問題はまだ終わらない

2016年7月7日(木)17時55分
ミシェル・ゴーマン

Rick Wilking-REUTERS

<米大統領選でクリントンを悩ませ続けた私用メール問題。「訴追を求めない」というFBIの判断で決着したかと思いきや、トランプを始めライバル共和党は「特別扱い」にカンカン。FBIの説明は、クリントンは法を犯したと言っているようにも聞こえるからだ>

 米民主党の大統領候補指名を確実にしたヒラリー・クリントンがオバマ政権で国務長官を務めていた時期に私用のメールアドレスで公務のメールを送っていた問題で、捜査を行ったFBIのジェームズ・コミー長官は5日、司法省に刑事訴追を勧告しないと発表した。

【参考記事】米大統領選、本命ヒラリーを悩ます「メール」スキャンダル

 コミー長官は、FBIの捜査でクリントンが国務長官時代に複数のメールサーバーを使ったことが判明し、機密情報の取り扱いに関する規則に違反した可能性を示す証拠も見つかったが、意図的な違法行為は認められず、訴追の必要はないと判断したと述べた。

 これを受けて、共和党のポール・ライアン下院議長は遺憾を表明。6日の記者会見で、FBIはクリントンを特別扱いしたと思うか聞かれて、「私にはそう思えるが、判断はきみたちに任せる」と答えた。

食らいつくトランプと共和党

 民主党と共和党の全国大会で正式に指名されれば、次期政権への業務引継ぎの一環として、両党の候補者は機密性の高い情報にアクセスできるようになる。ライアンは「ヒラリー・クリントンがいかに無神経に機密情報を扱ったかを考えれば、この選挙戦中に機密情報にアクセスさせるべきではない」と述べた。「この一件では、クリントンは自己防衛に終始し、嘘を重ねてきた。まだ解明すべき疑惑が多く残されている」

 FBIは勧告を行うだけで、最終的に司法省が判断を下すが、FBIの捜査結果を受けて、訴追見送りになるのはほぼ確実だ。クリントン陣営はこれでメール問題に幕を引きたい考えだが、共和党は大統領選本選まで引っ張る構えだ。コミー長官は5日の記者会見で、クリントンの行為に違法性はないとしつつも、クリントンとそのスタッフはメールの取り扱いについて「極めて軽率」だったと指摘。共和党はこの発言に食いついた。

 ドナルド・トランプはFBIの発表直後、この国のシステムは「いかさまだ」とツイートした。「クルックド・ヒラリー(悪徳ヒラリー)は国家機密を漏らしたと、FBI長官がはっきり認めたのに、お咎めなしとは、あきれたもんだ!」

【参考記事】ヒラリー・クリントン、トランプに利用されかねない6つのスキャンダル

 6日のツイートでも、クリントンは「嘘つき」で「無能」で、「救い難い判断ミスをする」とののしり続けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中