最新記事

イノベーション

【特別寄稿】ソーラー飛行機で世界一周を成し遂げたスイス人冒険家が説く「今世界が求める生き方」

2016年7月27日(水)18時00分
ベルトラン・ピカール、アンドレ・ボルシュベルグ

 私の祖父(気球飛行家)は成層圏に達し、地球の湾曲を目にした最初の人物。私の父はバチスカーフと呼ばれる深海探査艇を操り、世界で最も深いマリアナ海溝に潜った人物だ。この血筋は自然と私の考え方に影響している。しかし結局は、自分自身の選択なのだ。これまでに学んだやり方を変える意欲さえあれば、誰でも選択できる考え方だ。

アンドレ・ボルシュベルグ「不可能などない」

 あなたは今、素晴らしい一瞬を生きている。一方から見れば、人生における重要な段階を終えたところ。逆から見れば、目の前に機会と可能性が広がっている。この一瞬を、私はいつも大切にしてきた。人生で望むこと、欲しいものを夢に見るのもこの一瞬だ。

 私は常に新しいことに挑戦し、新しい課題に立ち向かい、新境地を切り拓くことを望んできた。技術的にも、個人的にも。これは発見と学習のプロセスでもある。今ではもう、この世に不可能などないこと、前向きで正しいマインドセット(発想)があれば何でも達成できることを、確信している。

 自分の考えを持ち、自分の夢を信じてもらいたい。「そんなの不可能だ」と言う人と会うこともあるだろう。だが関係ない。信じるな。

 13年前、ベルトランとソーラー・インパルスの開発に乗り出したときも、「不可能だ」と言う人がいた。航空機業界で史上初となるソーラー飛行機の開発を目指していた私たちに、多くの人が「それは無理だ」と言った。もちろん、この挑戦を成し遂げるためには、新技術を開発し、異なる価値観や文化的背景、考え方を持った仲間が集まる新たなチームを作る必要があった。だがそれだけでなく、いつでも壁を突破できるよう、チームとして高い士気を維持することも不可欠だった。困難に直面した時に落ち込むのではなく、時間をかけて状況を見極めながらピンチをチャンスに変えられるチームにしたかったからだ。

 燃料を使わずに夜間飛行ができる史上初のソーラー飛行機を開発し、実際に飛行させるなど、一見不可能なようにも思える。だがこの使命を達成するためにベルトランとタッグを組んだとき、お互いに一言も"no"と言わなかった。私にとってこの挑戦は、一生に一度の冒険であり、航空機の新しく画期的な可能性をアピールする意味があった。飛行速度や飛行高度の向上が目的ではなく、クリーンエネルギーの可能性や、人類の創造力と根気強く成し遂げる力を証明するのだという使命を掲げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ゼレンスキー大統領を指名手配

ワールド

インドネシアGDP、第1四半期は前年比+5.11%

ワールド

パナマ大統領選、右派ムリノ氏勝利 投資・ビジネス促

ビジネス

財新・中国サービスPMI、4月52.5に低下 受注
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中