最新記事

ニュースデータ

書店という文化インフラが、この20年余りで半減した

2016年8月2日(火)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

 時代の変化と言えば、それまでかもしれない。情報化の進展により人々のライフスタイルは大きく変わっているので、書籍の購入方法が変化するのは当然だ。しかし街の書店を、時代遅れの遺物と決めつけて良いのだろうか。

 本はネット書店でも街の書店でも買えるが、後者の魅力は思わぬ本にバッタリ出会えること。リアルの書店では、目当て以外の本を手に取ることがしばしばあり、発想の幅を広げることができる。ぶらりと入って「ハッ」という気付きを与えてくれる本屋さん。インターネットが普及した現在でも、その魅力(強み)は何にも代え難い。

【参考記事】マンガだけじゃない! 日本の子どもの読書量は多い

 こうした環境の変化もあってか、国民の読書実施率は下がっている。過去1年間に趣味として本を読んだことがある人の割合は、1991年では45.7%だったが、2011年では38.8%に減っている(総務省『社会生活基本調査』)。<図2>の年齢グラフによると、本を読む頻度が減っているのは子どもや若者であることが分かる。

maita160802-chart02.jpg

 スマホの普及により、他者とのコミュニケーションが時間的にも空間的にも際限が無くなっていること、アプリゲームの流行など、様々な要因が考えられるが、気軽に本を手に取れる環境が失われていることも大きいのではないだろうか。身近な地域における書店の減少は、その顕著な事例だ。

 子どもの場合、目当ての本を定めてネットで購入するより、書店や図書館をぶらぶらして、興味を引かれた本を手に取ることが多い。彼らが気軽に本に接することができるような環境を整備・維持することは重要だ。

 フランスでは街の書店が文化の象徴とみなされ、送料無料のネット販売を禁じる法律(通称「反アマゾン法」)が施行されている。日本でもこうした社会制度上の取り組みを検討してみてはどうだろうか。

<資料:総務省『経済センサス』
    総務省『社会生活基本調査』

筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長

ワールド

ノルウェー中銀、金利据え置き 引き締め長期化の可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中