最新記事

ドローン

英国防省、トンボ型偵察ドローンの配備目指す

2016年8月18日(木)17時10分
高森郁哉

 英国政府が民間の新興企業に資金提供し、トンボに似た形状で飛行して情報収集する小型ドローンの開発を後押しする。国防省が発表した総額8億ポンド(約1050億円)の技術開発支援プログラムの一環で、ニューズウィーク欧州版などが報じた。

自動飛行、障害物回避も可能なドローン

 「スキーター(Skeeter)」と名付けられたトンボ型偵察ドローンの開発を担うのは、オックスフォードに拠点を置くアニマル・ダイナミクス社。オックスフォード大学で生物力学を専門とするエイドリアン・トーマス教授と、起業家のアレックス・カッシア氏が2015年に設立した企業だ。同社は、動物が進化の過程で獲得した、スピード・耐性・エネルギー効率に優れた運動能力に着目し、技術開発に応用することを目指している。

skeeter-dragonfly-drone-military-darpa.jpg


 国防省が掲載したイメージ画像によると、スキーターはヘリコプターに似た胴体に、4枚の翅(はね)、4本の脚を備える。サイズは記されていないが、手に持った画像から推測すると、全長と翼幅はともに10〜15センチ程度になるようだ。

 個々の翅の可動域は、上下に40度、前後に45度。トンボを参考にした柔軟な羽ばたきにより、「革新的な飛行能力」を実現するという。

 前部に搭載されるセンサーにより、昼夜を問わず情報収集できるほか、生物を手本にした高速な障害物回避も可能。さらに、先進的な自動飛行モードも備える計画だ。国防省は資料の中で、「このドローンは、複雑な市街地での将来の作戦において、情報収集に多大なインパクトをもたらす可能性がある」と述べている。

【参考記事】空飛ぶ昆虫ロボット。疲れたら一休み。

軍事技術の革新を担う新ユニット

 国防省は今回の支援プログラムを立ち上げるにあたり、「イノベーション・アンド・リサーチ・インサイツ(IRIS)」というユニットを新設。米国防省の国防高等研究計画局(DARPA)に相当する同ユニットが、さまざまな新技術の軍事利用に向けたプロジェクトを主導する。

 マイケル・ファロン国防大臣は、「この新しいアプローチは、わが国最高の頭脳をもって常に敵の先を行くもので、英国の治安維持に役立つと同時に、われわれの経済を支えるだろう」とのコメントを寄せている。

レーザー兵器、VRヘルメットも

 IRISが支援するプロジェクトとしてはほかに、量子技術を応用した重量計による地下構造物(敵のトンネルや弾薬庫)の検知システム、空の脅威を迎撃するレーザー兵器、化学物質を含む事故を調査するモバイルロボット、空からの攻撃のシミュレーション練習に使われる仮想現実(VR)ヘルメットなどが挙げられている。

gravity.jpg

量子技術を応用した重量計による地下構造物(敵のトンネルや弾薬庫)の検知システム

FEB-12-New-Ministry-of-Defence-technology.jpg

空からの攻撃のシミュレーション練習に使われる仮想現実(VR)ヘルメット


 IRISは予算の8億ポンドで、今後10年かけてこれらのプロジェクトを進めていく。9月にはさらに詳しい情報を公開し、企業や研究者らの参加を募る予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米5月住宅建設業者指数45に低下、1月以来の低水準

ビジネス

米企業在庫、3月は0.1%減 市場予想に一致

ワールド

シンガポール、20年ぶりに新首相就任 

ワールド

米、ウクライナに20億ドルの追加軍事支援 防衛事業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中