最新記事

セクハラ

有名キャスターをここまで脅していたトランプ陣営

2016年11月18日(金)16時42分
ジェレミー・シュタール

今年3月、共和党候補の討論会の司会に臨むケリー(中央) Rebecca Cook-REUTERS

<昨年の公開討論会でトランプの女性蔑視発言を問いただした女性キャスターはこの一年、いつ襲われるかわからない状態にあった。トランプとその手下が、彼女に対する世間の憎悪を煽り立てたからだという。このほどCNNに出演し、明かした>

 次期大統領ドナルド・トランプのメイガン・ケリーに対する恨みは、われわれが想像するより遥かに陰湿だった。米FOXニュースのアンカーウーマンであるケリー昨年8月、大統領選予備選共和党の討論会でトランプが口にしてきた女性蔑視発言(「太った豚、だらしないズボラ、胸くそ悪いけだもの」等)を問いただして以来、トランプの支持者から殺害予告や嫌がらせの嵐に見舞われ、その後1年にわたり特別警護をつける必要に迫られた。

 今年1月には、FOX主催で開催された共和党候補の最後のテレビ討論会をトランプがボイコット。司会をする予定だったケリーを降板させろと圧力をかけたが、FOXがこれに応じなかった。

 ケリーは今週水曜、米CNNの番組に出演し、この間のトランプ陣営からの脅しの凄まじさについて語った。FOXニュースのある経営幹部がトランプ陣営のトップに対し、もしケリーが「殺される事態」になれば選挙にも悪影響が出る、と言って説得せざるを得ないほど切迫した状況だった。トランプ陣営はそれほどまでに、人々の間で彼女への憎悪をかき立てたという。

「敵」に対する憎悪をかきたてる

【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者

 トランプの手足となり働いたのが、トランプの弁護士で、トランプが経営する不動産会社トランプ・オーガニゼーションの副会長を務めるマイケル・コーエン。彼は"Let's gut her(彼女のはらわたを出してやろう)"というツイッターの投稿をリツイートした。「それも非常に危険度が高まっていたときに故意にね。当時FOXニュースの副社長だったビル・シャインがコーエンに電話して『こんなこと止めるべきだ。君が怒っているのは分かるが、彼女には3人の子どもがいてニューヨークを歩き回っているのだから』と話した」と、ケリーは言う。

 だがコーエンは気にも留めない様子だったので、シャインはこう言った。「もしケリーが殺されれば、トランプ氏の助けにならない」

【参考記事】「ヤジ事件」を機に、社会的セクハラ体質を徹底検証しては?

 するとコーエンはツイッターで、彼女を「嘘つき」や「裏切り者」「サイコ(精神異常者)」とけなしたりリツイートした。gutという単語については、身体的に危害を加える脅しの意味はなかったと、後日ツイッターで釈明した。

 ジャーナリストを脅すのはコーエンの常套手段だ。トランプの元妻イヴァナが過去のトランプの行為について「レイプ」だったと暴露した90年代の証言を、米オンライン誌デイリー・ビーストが見つけ出して報道すると、コーエンは「妻をレイプなんてできない」と一蹴し、取材していた複数の記者を脅迫した。「トランプ氏の名前が入る記事に『レイプ』という言葉を載せれば、お前らがこの世に生きている限り、生活をめちゃくちゃにしてやる。どん底からのし上がる方法は決して分からないだろう」

【参考記事】トランプ夫人のスピーチ盗用疑惑も 異常事態続出の共和党大会

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

能登半島地震、復興基金で財政措置検討─岸田首相=林

ビジネス

大和証券G本社、あおぞら銀と資本提携 筆頭株主に

ワールド

プラチナ、24年は従来予想上回る供給不足へ 南アと

ビジネス

ソフトバンクGの1―3月期純利益は2310億円 2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中