最新記事

話題作

『ファンタスティック・ビースト』で帰って来たハリポタの魔法の世界

2016年11月24日(木)18時20分
ダン・コイス

© 2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED. HARRY POTTER AND FANTASTIC BEASTS PUBLISHING RIGHTS © JKR

<「ハリポタ」新シリーズ第1作の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、難点もあるが未来の素敵な冒険を予感させる仕上がり>(写真:新たなヒーローは魔法動物学者のスキャマンダー〔写真右、エディ・レッドメイン〕)

 映画シリーズを最初から成功させるのは簡単なことではない。昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のように大成功を収めた作品もあるが、その希少性こそ難しさの証しだ。

 酷評された新3部作から10年を経て、『フォースの覚醒』は私たちをなじみ深い銀河系に連れていくと同時に、個性あふれる新キャラクターで驚かせてくれた。彼らの姿に、観客は過去よりも未来について胸躍らせた。

『フォースの覚醒』の天文学的な成功で、『スター・ウォーズ』シリーズの興行成績は『ハリー・ポッター』シリーズのそれを抜いた(1位は『アベンジャーズ』などのマーベル・シリーズ)。しかしハリー・ポッターの新シリーズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の公開で、順位はまた変わりそうだ。同シリーズは5部作となることが発表されている。

【参考記事】『ガール・オン・ザ・トレイン』は原作を超えて救いを感じさせるミステリー

 愛すべき魔法の世界が帰って来たのは大歓迎。でも『ファンタスティック・ビースト』は『フォースの覚醒』にはなれない。冴えない登場人物やまどろっこしい展開に物語は立ち往生。J・K・ローリングが初めて挑戦した映画脚本に、誰も口を挟めなかったのだろう。監督は『ハリー・ポッター』の後半4作を手掛けたデービッド・イエーツだが、彼が魔法と格闘して負けたのはこれが初めてだ。
それでも作品世界は魅力的だし、未来に素晴らしい冒険が待っていることも予想できる。つまり『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』はほぼ満足できるが、シリーズ中では最も駄目な作品になるだろう。

 問題の1つは魔法動物(ファンタスティック・ビースト)にある。やたらと登場するが、光りものが大好きなニフラー(下写真)以外、魅力的な動物がほとんどいない。時々主人公の魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)がボウトラックルやデミガイズたちの特徴を説明してくれるが、収集癖のある10歳の子供でなければ面白くない。

magc161124-02.jpg

© 2016 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED. HARRY POTTER AND FANTASTIC BEASTS PUBLISHING RIGHTS © JKR

 映画の舞台は1926年。冒頭、ニュートは蒸気船からニューヨークへ降り立つ。彼はすぐ、不安と不信が街に渦巻いていることを知る。謎めいた力(目撃者によれば「目のある黒い風」)による地割れや建物の倒壊が発生。ノーマジ(魔法使いでない普通の人間「マグル」を、アメリカではこう呼ぶ)の政治家たちは不和をあおり、新セーレム救世軍なる組織が人間界に潜む魔法使いの根絶を訴えている。

 ニュートは大切な魔法動物が詰まったトランクを抱えているが、とあることから動物たちが脱走。米魔法議会の元捜査官ティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)やノーマジのジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)と一緒に捜し回る。一方、魔法議会の長官パーシバル・グレイブス(コリン・ファレル)は新セーレム救世軍の青年クリーデンス(エズラ・ミラー)と秘密のやりとりをしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(7日配信記事)-英アストラゼネカが新型コロナ

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中