トランプ・蔡英文電話会談は周到に準備されていた?

2016年12月5日(月)13時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 それでも、タブーとされていた「直接会談」を「相手を総統と認めて」受けたということは前代未聞で、中国(大陸、北京政府)にとっては転変地変の大事件だ。

 おまけに両者は「経済、政治、安全保障での緊密な関係が台湾と米国の間にある」と確認し合ったという。台湾メディアおよびトランプ陣営が報じた。この中に「安全保障」という言葉があるのが、キーポイントである。

王毅外相抗議

 これに対して王毅外相は3日、つぎのように抗議した

「台湾がやった小細工だ」「これによって、アメリカが堅持してきた"一つの中国"の原則を変えることはできない」という旨の発言をした。「2016年国際形勢と中国外交政策シンポジウム」が終わった後に、香港の鳳凰(フェニックス)の記者の問いに答えたものだ。

 中国外交部(外務省)のスポークスマンは「慎重、適切に台湾問題を処理し、中米関係の大局が不必要な干渉を受けないよう求めた」ことと、「トランプ陣営側に直接、抗議を申し入れた」と発表した。

 また国務院台湾弁公室のスポークスマンも3日、「台湾の小細工が国際社会で普遍的に認められている「一つの中国」の大原則を変えることなどできない。台湾独立には断固反対していく」という趣旨のことを述べている。

 そして中国政府の通信社である新華社(12月3日電)は、「ホワイトハウスの国家安全委員会は"一つの中国"という対中政策は不変だ。台湾地区の平和安定はアメリカの根本的な利益にかなっている」と述べたと報道した。

顔に泥を塗られた習近平――曲芸を演じた「忍者外交」の名手キシンジャー

 さて、これは本当に「台湾の小細工」なのだろうか?

 だとすれば、トランプ・蔡英文電話会談が行われていた、そのほぼ同時刻に、なぜあのキッシンジャー氏は人民大会堂で習近平国家主席と会っていたのだろうか?

 キッシンジャーと言えば、「忍者外交」で有名だ。

 当時、ベトナム戦争(1960年12月~1975年)の長期化と泥沼化に手を焼いていたアメリカは、中ソ対立が激しい中国に接近し、米ソ対立におけるアメリカの立場を有利に持って行こうというもくろみもあり、水面下で北京と接近していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国碧桂園、清算審理が延期 香港裁判所で来月11日

ワールド

米声優、AI企業を提訴 声を無断使用か

ワールド

フィリピン中銀、タカ派スタンス弱めればペソに下押し

ビジネス

適正な為替レート、「110─120円台」が半数=帝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中