最新記事

トランプ就任式

警官に抑え込まれた反トランプ派、200人以上逮捕

2017年1月21日(土)19時27分
エミリー・カデイ

放火された車の周囲から反トランプ派を遠ざけようとする警官隊 Bryan Woolston-REUTERS

<暴徒化したのはごく一部、多くは平和的なデモ参加者だった。警官は、閃光弾や唐辛子スプレーで応じた>

 新しい大統領を迎える式典で祝賀ムードにあふれる国会議事堂からはほとんど聞こえなかったが、街中ではドナルド・トランプが新しい大統領になるのは認めらないとするデモ参加者と警官の間で、一部激しい衝突が起こった。ネットにはまるで暴動のような動画があふれた。確かに投石や放火などの破壊行為もあったが、多くは平和的だったようだ。

【参考記事】テレビに映らなかったトランプ大統領就任式

 宣誓式を待つ首都ワシントンのオフィス街では、デモ隊の一部が飲食店や銀行の窓ガラスを割るなど暴徒化し、警官隊と衝突する事態に発展した。午後2時過ぎに宣誓式が終わってしばらく経つと、デモ隊は大企業のオフィスやロビイストの拠点が集中するKストリートに集結。機動服に身を包んだ警察が閃光弾を撃ち込み、群衆をじりじりと後退させた。黒い服を着て黒い覆面をした数十人のデモ隊は、警官隊に対抗するためごみ箱や公園のベンチを倒し、道の真ん中に引きずり出して道路を塞いだ。上空に旋回するヘリコプターを妨害しようと、看板やごみ箱を燃やして黒煙を上げた者もいた。

暴徒を叱る声も

 実際に暴徒化して大混乱を引き起こしたのはごく一部だった。現場にいた数百人のデモ隊は、暴徒化した集団の周囲を囲むようにして様子を眺めたり、動画を撮ったりしていた。時折声をそろえて反トランプを叫んだが、閃光弾が発射されると逃げ惑い散り散りになった。バス停の掲示板を壊している2人の男に、誰かが「バスに乗るのは労働者なんだから止めろ」と怒鳴って制止した。

 Kストリートの衝突現場から数百メートルほど離れたマクファーソン・スクエアにも、数百人規模のデモ隊が詰めかけ、トランプと新政権を痛烈に批判する反トランプ派の演説に耳を傾けた。


【参考記事】トランプ就任演説、挑発的な姿勢はどこまで本物なのか?

 首都警察の署長代理ピーター・ニューシャムは、夕方記者会見を開き、マクドナルドやスターバックスなどの店舗の窓ガラスを割ったり車両を破壊したりするなどして217人が逮捕されたと語った。警察に対する投石も行い、警官6人が軽傷を負った。メンバーの多くがハンマーを持った数百人規模の集団を退散させるため、警察は唐辛子スプレーを使用したという。20日の午後にKストリートで警官隊が閃光弾を使用したとされる報告については、部内で確認中とした。当初、警察はデモ隊が催涙弾を使用した可能性を指摘していたが、発射場所や撃ち込まれた方向、裏付けとなる複数の報道から、デモ隊ではなく警官隊の方が使用したのは明らかのようだ。警察は日没後も複数の抗議グループの監視を継続中としたうえで、ニューシャムは「長い1日になりそうだ」と言った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中