最新記事

アメリカ政治

「トランプはロシアに弱みを握られている」は誤報なのか

2017年1月12日(木)18時19分
ルーシー・ウェストコット

マンハッタンのトランプタワーで当選後初の記者会見に臨んだトランプ Lucas Jackson-REUTERS

<ドナルド・トランプ当選後初の記者会見前夜、一部メディアがトランプはロシアに都合の悪い情報を握られていると報道。裏付けが不十分で追及は不発に終わったが、本当ならいつまで隠し通せるのか>

 ナンセンス、フェイクニュース、いかさま記事――ドナルド・トランプ米次期大統領は11日、ニューヨークのトランプ・タワーで行われた当選後初の記者会見で、ロシア政府が彼の弱みを握っているという報道について聞かれると、トランプ節を炸裂させ、火消しに躍起になった。

【参考記事】トランプ初会見は大荒れ、不安だらけの新政権

 トランプが記者会見を行うのは昨年7月27日以来のこと。報道陣は多数の質問を準備していたが、一部メディアが前夜にロシア政府がトランプについて「いい情報」を握っていると報道をしたため、会見でもその話が中心になった。なかでも最も破廉恥なのは、「バラク・オバマ米大統領とミシェル夫人がモスクワを訪れたときに宿泊したホテルの部屋にトランプが複数の売春婦を呼び、ベッドに放尿させて眺めた」というもの。この部屋はロシア当局が諜報に使う部屋で、カメラ等も予め据え付けられているという(この一件が事実かどうか、確認は取れていない)。

 CNNによると、米情報機関のトップ4人――ジェームズ・クラッパー国家情報局長官、ジェームズ・コミーFBI長官、ジョン・ブレナンCIA長官、マイケル・ロジャーズNSA(米国家安全保障局)長官は先週、ロシアのサイバー攻撃についてオバマとトランプに報告を行い、ロシアがトランプの不名誉な情報を握っていた疑いがあることを説明した。米ニュースサイト、バズフィードは11日、真偽については「確認がとれておらず、虚偽の可能性がある」と断った上で、英情報機関の元工作員によるものとされる35ページの文書を公開。そこにはロシア政府はトランプを利用するため数年前から工作を行っていたと書かれている。先の売春婦の一件もこの文書に書かれている。疑惑を記した文書は、米情報機関とワシントンのジャーナリストの間では何カ月も前から回覧され注目されていた。裏が取れないので、会見の前日にバズフィードがこれを公開するまで報道されなかった。

【参考記事】オバマが報復表明、米大統領選でトランプを有利にした露サイバー攻撃

「ロシアに借りはない」

 真偽のほどは定かではないが、この文書にはトランプはロシアから脅迫される立場にあったと書かれている。トランプは記者会見で、この文書は「絶対に書かれてはならず、公開されてはならない」ものだと怒りをあらわにした。ロシアのホテルに滞在する際には側近やボディガードに小型カメラに注意するよう常に警告しているぐらい注意している、とも語った。

【参考記事】ロシアのサイバー攻撃をようやく認めたトランプ

 就任式を9日後に控えた今回の会見では、メキシコとの国境に建設する壁や大統領職とビジネスの「利益相反」問題、空席になっている連邦最高裁判所の判事の指名問題なども取り上げられたが、報道陣の最大の関心はロシアとの関係にあった。トランプはこう言った。「ロシアとは何の関係もしていない。取引もない。借金もない。不動産デベロッパーとしては、私は極端に債務が少ない男だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中