最新記事

国民性

英国的「行列」のお作法とは? 行列と「6」の不思議な関係

2017年2月20日(月)16時45分
松丸さとみ

ATMに並ぶ人々 Stefan Wermuth-REUTERS

英国と日本の共通点は多い。島国、お茶の文化、王室・皇室の存在など。そして忘れてならないのが、「行列」だ。銀行、スーパーのレジ、イベント会場などで、辛抱強く並ぶ姿が英国でも日本でもよく見られる。しかし英国での行列を理解するには、「6」という数字が大きく関わっていることが、このほど明らかになった。

英国の行列にまつわる不思議な「6」

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの教授らが行った調査によると、行列に並んでいる英国人が、なかなか進まない列に痺れを切らすまでに要する時間は、平均で約6分(5分54秒)だった。しかし一方で、自分の後ろに並んでいる人の数が6人以上になったら、行列から外れたいという思いがほぼ消え、このまま列の中にいようと思う傾向も分かった。英国人はまた、行列に並んでいる人数が6人以上の場合、その行列には加わらない可能性が高いという。

行列に並んでいる際、早く先に進みたいものの、前の人とあまり距離を縮めすぎるのもお互い不快になるものだ。英国で列に並ぶ場合、他人と距離が近いことから来るストレスや不安を避けるためには、最低でも6インチ(約15センチメートル強)のスペースを空けたほうがよいということも分かった。

英国での「行列」、マナー違反は?

調査ではまた、英国で行列に加わる上での「御法度行為」も明らかにされた。英国人に最も嫌われる行列マナー違反は、「割り込み」だった。テレグラフによると、割り込みが英国人から最も嫌われる理由は、「先着順」という英国人の倫理観に逆らうものだからだ。これは同じ行列好き国民である日本人も同感だろう。

英国のレディング大学学生自治会のウェブサイトには、海外からの新入学生向けに英国での生活に慣れるためのページが作られている。そこには「行列」と言う項目があり、「行列は英国人にとって非常に大切なものです。行列により、一番長く待っていた人が、間違いなく最初にサービスを受けられるようになります。(略)割り込みは非常に失礼な行為とされています」という但し書きまである。海外からの留学生が英国式の行列を知らずに、問題が起こったケースが過去にあったのかもしれない。

またBBCによると、同調査による「行列の御法度行為」の中には、駅でのエスカレーターで「左右を間違えて立つこと」が含まれていた。ただしこれは、主にロンドンに住む人たちが、駅でのエスカレーター作法を知らない観光客にストレスを抱いているのが原因らしい。ロンドンでは日本の大阪同様、地下鉄のエスカレーターは急ぐ人のために左側を空けて右側に立つのがマナーとされている(東京はその逆で右側を空けて左側に立つ)。

【参考記事】ブレグジットの影で進んでいた「孤独」の健康被害。英国で委員会発足

意外なところでは、「行列に並んでいる最中に会話をする」というのも、御法度行為に含まれていた。列を待っている間は楽しく会話でもして、待つイライラを少しでも紛らわせたいものだが、英国人はおとなしく黙って待つのが好きなようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米5月住宅建設業者指数45に低下、1月以来の低水準

ビジネス

米企業在庫、3月は0.1%減 市場予想に一致

ワールド

シンガポール、20年ぶりに新首相就任 

ワールド

米、ウクライナに20億ドルの追加軍事支援 防衛事業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中