最新記事

航空業界

LCCが殺到! 関空が描く「アジアハブ」の野望

2017年2月28日(火)11時40分
中川雅博(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

toyokeizai170228-2.jpg

待ち時間を大幅に短縮した「スマートセキュリティシステム」。写真はトレーの流れるレーン部分(写真:関西エアポート)

これまでの知見が生かされたのは、今回の新ターミナルビルも同様だ。建設計画が立ち上がったのは前身の新関西国際空港株式会社(新関空会社)時代だが、関西エアポートが引き継いだ後に2つの大きな修正を加えたという。

1つは保安検査場に導入された「スマートセキュリティシステム」だ。国際線に乗る際に最も手間なのが保安検査だが、この新システムによって待ち時間はこれまでの3分の1になるという。「チェックインや保安検査、入国審査は待ち時間のボトルネック。空港会社として顧客満足度を上げるために重要な点だ」(ムノント副社長)。

トレーの移動を自動化して人間が動かす手間を省いたほか、トレーの流れるレーンを従来の国内空港のものより2倍以上延長して複数の人が一度に利用できるようにした。現在は1時間当たりの対応人数が180人だが、300人をさばけるようになるという。またボディスキャナーを取り入れ、検査員の手によるボディチェックよりも素早く検査を終えられるようにした。

海外空港を手本に免税店を充実

保安検査を経て出国審査を終えた客が目にするのが、ターミナル計画における2つ目の修正点だ。「ウォークスルー型」と呼ばれる免税店である。商品の展示スペースの間の曲がりくねった通路を通り抜けなければ、搭乗口にたどり着けない形になっている。これにより多くの商品が客の目に触れ、購買を促せると見ている。

toyokeizai170228-3.jpg

国内初の「ウォークスルー」型免税店。天井の模様からもわかるように、蛇行した通路が特徴(記者撮影)

効果はすでに出始めた。新ターミナル開業後15日間の免税店の売り上げは前年の同期間と比べて50%増えたという。中国の旧正月に合わせてオープンできたことが功を奏した。

実はこのウォークスルー型免税店はシドニーや香港、ドバイ、カンボジアのシェムリアップなどの空港にあり、世界中で取り入れられている。「日本の空港は免税エリアよりも出国審査前のほうが小売店が多い。ただ関空の利用客の7割は外国人。彼らは出国審査をなるべく早く済ませて、その後に買い物をしたい。だからこそ免税店の充実が必要だった」(ムノント副社長)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ停戦巡り協議

ワールド

イスラエル軍部隊の人権侵害、米国が初めて認定 ガザ

ワールド

原油先物下落、中東停戦協議への期待で 米利下げ観測

ビジネス

米国株式市場=続伸、テスラ・アップルが高い FOM
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中