最新記事

北朝鮮

金正男暗殺の謎 北朝鮮、従来の「工作作戦」と異なる手口

2017年2月28日(火)10時33分

 2月24日、北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄、金正男氏の奇妙な暗殺事件には、同国がこれまで海外で実行してきた作戦とは大きく異なる点がある、と専門家は指摘。写真は北朝鮮の工作員だった金賢姫元死刑囚。1987年、大韓航空858便に爆弾を仕掛け、乗客乗員115人全員が死亡した。2009年韓国で撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄、金正男氏の奇妙な暗殺事件には、同国がこれまで海外で実行してきた作戦とは大きく異なる点がある、と専門家は指摘する。

金正男氏は先週、マレーシア首都クアラルンプールの空港で殺害された。警察では即効性の毒物による攻撃を受けたと見ている。当局が実行犯として逮捕した2人の女性のうち、1人はインドネシア国籍、もう1人はベトナムのパスポートを持ち、ともに拘留されている。

韓国は、金正男氏の暗殺を計画したのは、「偵察総局(RGB)」と呼ばれる北朝鮮の謎の機関であると指摘している。

国際連合はRGBを北朝鮮の「中心的な情報機関」と位置付けており、北朝鮮の武器取引に関与しているとして、昨年3月に制裁対象に指定した。

だが、北朝鮮指導部に詳しい専門家のマイケル・マッデン氏によれば、自らの一族による王朝的な支配について公然と批判していた正男氏の姿勢が目立っていただけに、今回の暗殺はさまざまな機関による共同作戦だった可能性があるという。

「RGBは、たくさんある可能性の1つにすぎない。関与した機関を特定するには、少なくとも、もう1週間必要だろう」とマッデン氏は語る。

マレーシア警察は23日、北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(47)を逮捕した。同容疑者は、漢方薬を扱う小さな会社に勤務しているとしてマレーシアの就労ビザを持ち、妻と2人の子どもと共にクアラルンプールで暮らしていた。

脱北者であるジャン・ジンスン氏によれば、リ容疑者のような海外在住の北朝鮮人を利用するやり方は、一流スパイの養成所である「35号室」による作戦の特徴だという。ジャン氏は、かつて朝鮮労働党内で「35号室」と並ぶ情報機関である「統一戦線部」に勤務していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中