最新記事

ドイツ

ドイツ「庶民派」シュルツ氏、連邦議会選でメルケルに勝てるか

2017年2月28日(火)10時48分

65分に及ぶ演説のなかで、シュルツ氏は雇用不安と高齢者の貧困に的を絞り、年金制度の維持と非正規雇用契約の縮小、加えて前回、SPDが政権を率いていた当時に導入した労働改革「アジェンダ2010」の一部見直しを約束した。

「わが国に数十億ユーロもの財政黒字があるなら、これを高所得者向けの減税に使うべきではなく、投資に回すべきだ」とシュルツ氏は述べ、教育、インフラ、デジタル技術への投資拡大を要求した。

投資拡大を優先する点で、シュルツ氏はメルケル政権のジョイブレ財務相とは好対照である。同財務相は財政均衡をあくまで追求し、財政黒字は当面の債務返済と選挙後の減税に使いたいとしている。

SPDとしても、いわゆる「債務ブレーキ」の解除には踏み込まないだろう。この原則の下、政府は毎年、国内総生産(GDP)の0.35%相当までしか新規国債を発行できないことになっている。

「それは議論にもなっていない。誰もそのような話はしていない」とシュルツ氏の盟友でSPD副党首を務めるラルフ・ステグナー氏はロイターに語った。

だが、シュルツ氏が率いる政権が誕生すれば、ユーロ圏諸国に経済改革を求める際にも、ギリシャによるユーロ離脱の憶測を生むほど強硬だったショイブレ財務相のやり方に比べて、もっと寛容なアプローチが取られるだろう。

<対ギリシャ方針で違いを強調>

メルケル首相の下でドイツは、諸国の先頭に立って、ギリシャに対し支援の条件として財政緊縮を求めた。

メルケル政権はギリシャ政府に対し、国債償還を除くプライマリーバランスでGDP比3.5%の黒字を達成し、それを維持することを求めた。ドイツ政府は、ギリシャ政府がこの目標を達成できれば債務免除はまったく必要なくなるだろうと主張した。

これに対してSPDは、ギリシャが受け入れるべき財政緊縮を緩和する姿勢を見せている。

「ギリシャは大規模な改革を行なわなければならず、一般の国民に重い負担がかかっている」とステグナー氏は述べ、ギリシャ政府がすでに黒字を達成したと指摘する。「だがそれでもショイブレ氏には十分ではないという。この問題に対するSPDの姿勢はまったく異なる」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中