最新記事

ブラジル

「世界一の祝祭」リオのカルナヴァルは熾烈なリーグ戦だった

2017年3月27日(月)15時19分
ケイタブラジル(KTa☆brasil)

外国のセレブも参加、日本人参加者はすでに数百人

こうしたカルナヴァルの楽しさは世界各地に飛び火し、本場リオのエスコーラ・ヂ・サンバへの外国人参加者も増加の一途だ。

サンバは2016年に100周年を迎えたが、リオのカルナヴァルへの外国人の参加は80年代から本格的に始まった。世界的有名人やセレブの観戦はもとより、90年代後半にはナオミ・キャンベルやリッキー・マーティンなど、リオのエスコーラのパレードに参加する有名人も出始めた。歴代のサッカー・ブラジル代表はもとより、マラドーナ、マドンナ、ジェニファー・ロペス等の南北アメリカ大陸のセレブたちは常連だ。

brasil170327-3.jpg

有名人も一般人も一緒になって盛り上がるのがリオのカルナヴァル。写真左:国民的歌手のイヴェッチ・サンガーロ/写真右:名門ポルテーラの重鎮チア・スリッカと抱き合い"老若男女のサンバ精神"を交わすロナウジーニョ

また、ファットボーイ・スリムをはじめ世界中のDJたちもリオに毎年集結している。実際、筆者がミュージシャンとして共演したデュラン・デュランのボーカル、サイモン自身からもその経験から魅力を語られたことがある。今年は米国のアフリカ系音楽を讃えるテーマでパレードを行ったエスコーラへのビヨンセ参加が噂されたが、妊娠したので絶ち消えに。このような話題は欧米のメディアでは頻繁に報道されている。

brasil170327-4.jpg

巨大な山車や衣装は毎年新調されるテーマ曲サンバに合わせてデザインされる

90年代後半から、メインスタジアムで行われるエスコーラのパレードで、採点対象役など重要な役で出場する外国人挑戦者も徐々に増えていった。2010年代には採点対象の打楽器隊や、オーディションのあるダンサー役などでも、世界中から本格的な参加を目指して来た人がほとんどのエスコーラにいるほどとなった。

日本人の本格参加も90年代に幕開けた。現地の各エスコーラに参加したり、カルナヴァルのメインスタジアムでのパレードに所定の衣装を買って参加したりという"誰でも参加できる一般的なパート"での参加経験のある日本人の数は、すでに累計で数百人に上るとみられる。

さらに、日本のアマチュア愛好家で、オーディションを通過して出場する採点対象役の打楽器隊経験者も少しずつだが増加している。一方、ダンサーはといえば、採点対象役ではないがオーディションが必要なダンサーとして出場する日本人は格段に増加している。しかし、実際は本場のパレードで採点対象役のダンサーとなった日本人は、未だに先駆者でプロになった中島洋二氏が唯一の例だ(「本場リオのリーグでの優勝に貢献した」と豪語し日本でのプロフィールとする日本人ダンサーは出てきているが......)。有能な人材の参入と活躍、それに正確な評価と検証が求められている。

brasil170327-5.jpg

重要な採点対象役である打楽器奏者と弦楽器奏者が演奏するのはいずれもブラジル・サンバ独自の楽器の数々

筆者はリオのカルナヴァルに1997年(当時19歳)に初めて参加し、今年で20年が経った。オーディションに通過し、採点対象の打楽器隊員としてさまざまなエスコーラで出場し続けているだけでなく、外国人初の公式認定打楽器指導者となった。また、日本やブラジル、そして第三国のメディアにもレポートするジャーナリストとしてもリオ市に登録されるようになった。エスコーラの運営・執行サイドでも活動してきた。

3大名門エスコーラのひとつとして知られるImpério Serrano(インペーリオ・セハーノ)には今年で参加16周年を迎えた(特定のエスコーラでの外国人最長記録だ)が、ここで採点対象の打楽器奏者(兼公式認定指導者)として活動し、今年は幹部メンバーにもなった。筆者がその幹部ミーティングで外国人を歓迎するプロジェクトを打ち出したところ、今年は筆者以外に日本人が15名参加し話題となった。他にもドイツ、ポーランド、米国、オーストラリア、メキシコ、パラグアイ、アルゼンチン、チリをはじめ、150名もの外国人が参加した。

【参考記事】知られざるリオ五輪もうひとつの「日本PR」

brasil170327-6.jpg

エスコーラの顔役でシンボル旗を持つペアダンサー役(全エスコーラ共通役)の演技はパレード注目の花形。しかし同時に採点の40点を担う責任を追う。写真は70周年を迎えた名門インペーリオ・セハーノの2人(リオ五輪時にはジャパンハウスにも登場)。重い衣装とプレッシャーを背負う役で、今年も演技中に転倒し大減点となったダンサーもいた Photo: Luiz Eduardo

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米加金利の乖離に限界あり=カナダ中銀総裁

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中