最新記事

ヨーロッパ

難民をコンテナに収容するハンガリー

2017年3月29日(水)16時36分
ジェイソン・ルミエール

ハンガリーとの国境、セルビア側の急造キャンプに収容されたアフガニスタン難民 Marko Djurica-REUTERS

ハンガリーでは3月27日、全ての難民たちを、国境近くに作る難民キャンプで運送用コンテナに収容するという新しい法律が発効した。当局者はこの法律を、ハンガリーをテロ攻撃から守るためのものと述べている。難民申請者は、ハンガリーに新しくやってきた者も、すでに入国済みの者も、セルビアとの国境付近の2カ所のキャンプに設置される324の運送用コンテナに収容され、難民申請の完了を待つことになる。

【参考記事】難民を拒絶するハンガリー政府の言い分

この法律は3月7日に国会で可決されたもので、人権団体と国連は非難の声をあげている。ハンガリーのオルバン・ビクトル首相率いる政権はこれまでにも、ヨーロッパにおける難民危機に対して強硬姿勢を示しており、物議をかもしてきた。同政権は今回の安全措置についても、その正当性を訴えている。

ハンガリーのシャンドール・ピンター内務大臣は声明を発表し、「この法律の目的は、在留資格が確定していない移民が、国内ならびに欧州連合(EU)圏内を自由に移動することを防ぎ、そうした移住による安全上のリスクを減らすことである」と述べた。

すでにハンガリー国内にいる不法移民も収容対象となる。コンテナ・キャンプへの収容が免除されるのは、成人の同伴者がいない14歳未満の子どもだけで、養護施設に収容する。

【参考記事】一般人に大切な決断を託す国民投票はこんなに危険

声明にはこう書かれている。「まもなく施行される新たな規制に準じ、すでにハンガリーに入った不法移民も全員、国境まで連行される」

部屋以外は提供

内務省によると、コンテナ・キャンプに収容される難民には、1日3回の食事と、ベッド、寝具、温水、トイレ設備、個別の衛生用品が提供される。また、マスメディアと通信機器の利用が可能だ。

キャンプ開設当日には、欧州委員会の移民担当委員ディミトリス・アヴラモプロスが首都ブダペストを訪問し、新しい収容施設がEU法に違反していないかを確認する予定だ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、ハンガリーに対して方針を修正するよう要求しており、欧州委員会に対してもハンガリーに強い姿勢を取るよう主張している。

【参考記事】難民を締め出したハンガリーに「EUから出て行け」

HRWの東欧と西バルカン地域担当調査員リディア・ガルは以下のよう述べた。「ハンガリーが新たに打ち出した法律・方針は、人権を著しく侵害するものであり、難民が保護を受けることを困難にする。また、難民申請者にとって不快、もしくはきわめて危険なものである」

キャンプは、ハンガリーが南側の国境に沿って建設した「第1のフェンス」沿いにある。新たに、夜間用監視カメラと動きに反応する赤外線センサーを備えた「第2のフェンス」も現在建設中だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏経常収支、2月は調整後で黒字縮小 貿易黒字

ビジネス

ECB、6月利下げの可能性を「非常に明確」に示唆=

ビジネス

IMFが貸付政策改革、債務交渉中でも危機国支援へ

ワールド

米国務長官が近く訪中へ、「歓迎」と中国外務省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中