最新記事

中韓関係

朴槿恵大統領罷免とTHAAD配備に中国は?

2017年3月13日(月)15時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

なぜなら、そのタイミングにピタリと合わせて、3月7日、THAADの韓国配備が始まったからだ。韓国国防部は、6日夜、THAAD発射台2基などが韓国に到着したことを明らかにした。2カ月以内には残りの装備の搬入も終わり、4月にはロッテグループが韓国国防部に売り渡した星州ゴルフ場跡に移され、発射可能な段階に入る予定になっている。

中国の中央テレビ局CCTVはこれに関して速報で報じた。また中国外交部報道官は8日の定例記者会見で、「われわれは必ず必要な措置をとって中国自身の安全と利益を守る。このこと(THAAD配備)が招く全ての結果は、米韓が責任を負わなければならない」と強い語調で米韓を批難した。

この「必要な措置」とは何を指すのか。

2月23日、中国国防部の報道官は、韓国のロッテグループが韓国国防部とTHAAD配備のための土地の交換契約をすると宣言したことに対し「中国の軍隊はすでに必要な準備をしている」と宣言している。つまり「いざとなれば、軍事力を行使する」という意味だ。中国のネットは一斉にこの言葉を転載し、中には「国防部:THAADの問題は中国の軍事力にモノを言わせる」といった表現で伝えているものもある。

王毅外相:武力より対話を!

このように脅しておきながら、3月8日、王毅外相は全人代(全国人民代表大会)の外交部記者会見で、以下のように抗議した。

1.朝鮮半島の情勢は、まるで二本の列車が互いに譲らず絶えず加速しながら走っているようなものだ。双方とも正面衝突をする準備ができているのだろうか?赤信号をつけ、ブレーキをかけろ!

2.中国は二本のレールのポイントを切り替える役割を果たす。(中国が唱えてきた六者)会談の道に戻る以外に、解決の道はない。

3.韓国は崖っぷちから馬を引き返せ!THAADを配備すれば、韓国は今よりももっと危険な状態に追い込まれる。

この3番目に書いた「馬を引き返す」役割を、中国は次期大統領候補・ムン氏に期待しているのだ。ムン氏が2015年末の慰安婦問題に関する日韓合意を覆す可能性があるように、すでに配備が始まったTHAADを、有名無実化する可能性があるというのが、中国の思惑だ。

しかしそうなった場合、米韓関係はどうなるのか?

米中首脳会談を4月に?

そしてTHAAD配備に着手してしまったアメリカと中国との関係はどうなのか?

もちろん安倍首相訪米前夜に、トランプ大統領は習近平国家主席と電話会談をして、「一つの中国」を尊重すると伝えた。王毅外相はこのことに触れて、米中両国の関係は「良い方向に向かっている」とした。しかしTHAAD配備の既成事実化に着手したアメリカと、どのようにして「良い方向に」向かい得るのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ビジネス

経済の構造変化もインフレ圧力に、看過すべきでない=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中