最新記事

仏大統領選

極右ルペンの脱悪魔化は本物か

2017年4月21日(金)10時30分
エマ・ケイト・サイモンズ

党内の派閥争いの行方は

注目の人物はほかにもいる。国民戦線の外郭団体ジャンヌの財務責任者で、イル・ド・フランス地方議会議員のアクセル・ルストー(彼も不正資金疑惑で起訴された)と、ルペンの最高顧問フィリップ・ペナンクだ。

2人はシャティヨンと同じく、過激な反イスラエル的主張のせいで解散を命じられた極右ナショナリスト団体の出身。ベルギーのファシスト政治家でナチス武装親衛隊員だった故レオン・ドグレルを崇拝し、生前に彼の元を訪れたこともある。

国民戦線内部で力を増す極右主義者の派閥は、比較的穏健派のフロリアン・フィリポ副党首が率いるグループや、ルペンの姪で保守派カトリックのマリオン・マレシャルルペンの一派と勢力争いを繰り広げている。

【参考記事】「不服従のフランス」からEUへのレジスタンスが始まる 反骨の左翼メランション急上昇の秘密

ショプラードによれば、シャティヨンらが影響力を持つのは「財務を牛耳っているから」。ルペンは彼らをかばい、その言動が党を再び「悪魔化」しているにもかかわらず、手を切ることを拒んでいるという。

ルペンの手腕で国民戦線のイメージは変化してきたかもしれない。だが、実態はどうか。有権者の多くは懐疑的な見方を拭えないと、国民戦線やその支持層の構図に詳しい歴史学者バレリー・イグネは指摘する。

フランス国外のメディアは、グローバリゼーションや主流政党に怒る左派や、就職難にあえぐ若年層が国民戦線支持に転じている点に目を取られがち。だが同党の支持者の大半を占めるのは今も、ジャンマリ時代の主張に共感する人々だ。

有権者の過半数は国民戦線を過激な極右と見なしているためルペンは大統領選で敗北すると、イグネは予測する。「フランス国民は愚かではない」

実際、世論調査によれば、ルペンは決選投票でマクロンに敗れる見込みだ。ただし得票率の差は、父親とシラクが対決したときよりもずっと縮まるだろう。

ルペンに必ず投票すると回答する有権者は、マクロンの場合よりも多い。愚かでないフランス国民の間にも、国民戦線が脱悪魔化したと信じる人はいる。

From Foreign Policy Magazine

[2017年4月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に

ビジネス

ENEOSHD、発行済み株式の22.68%上限に自

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中