最新記事

英王室

ヘンリー王子が心の問題を告白 その背景にあるものとは

2017年4月24日(月)15時45分
松丸さとみ

Reuters / Matthew Childs

英国のヘンリー王子(通称ハリー王子)が、母親であるダイアナ妃の死をきっかけに感情をすべて押し殺し、心の問題を抱えていたと告白して世界中で話題になった。ダイアナ妃の事故死からまもなく20年となる今、心の内を明かした王子の思いの背景には何があるのか。

感情を殺しボロボロな状態へ

ハリー王子が心の内を明かしたのは、デイリー・テレグラフとのインタビューだった。テレグラフの新しいポッドキャスト「マッド・ワールド」に初回ゲストとして登場した時だ。これまで英国王室のメンバーが自らの精神状態について語ることはなかったため、極めて異例のインタビューとなった。

全10回のシリーズとなる「マッド・ワールド」は、心の問題に関する経験をさまざまな人たちに話してもらい、心が病むのは至って普通である、というメッセージを発信することを目指している。

インタビューでは、12歳の時に母親を亡くした王子が、その後28歳になるまでずっと自分の感情を殺して無視してきたこと、兄のウィリアム王子など周囲の助言もあり28歳の時に精神分析医とのカウンセリングを受けたこと、その後2年にわたり心の重荷を下ろす過程でボロボロの状態が続き、30歳を過ぎてやっといい状態になったことなどを赤裸々に語っている。

RTR68FEa.jpg

ダイアナ妃(当時)、ハリー、ウィリアム両王子とチャールズ皇太子(1995年9月) Reuters

実はこのインタビューは、単にハリー王子の心の内を明かした「特ダネ記事」というわけではなかった。ハリー王子と兄のウィリアム王子、そしてウィリアム王子の妻キャサリン妃の3人が立ち上げた慈善事業「ヘッズ・トゥゲザー」を推進する試みでもあった。

インタビュー中でも王子が説明していたが、「ヘッズ・トゥゲザー」は心の病気にまつわる「汚名」や「恥」といった偏見を取り払い、人々がもっと気軽に自分の感情について話し、相談できる環境を作ることを目的としている。

4人に1人が心の問題を抱える英国

王室が「ヘッズ・トゥゲザー」のような活動を行い、テレグラフという大手新聞社が「マッド・ワールド」のような特集を組むその背景には、心の問題を取り巻く英国の厳しい状況がある。

ガーディアンが伝えた英国国家統計局の調査によると、16〜24歳の女性の4人に1人が、不安やうつなど何らかの心の問題を抱えている。男性は6人に1人の割合だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪CPI、第1四半期は予想以上に上昇 年内利下げの

ワールド

麻生自民副総裁、トランプ氏とNYで会談 中国の課題

ビジネス

米石油・ガス業界のM&A、第1四半期は過去最高の5

ビジネス

米テスラ、メキシコ・インドの工場新設計画が不透明に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中