最新記事

インターネット

アマゾンIDで他サイトでも買い物できるようにする思惑

2017年5月23日(火)11時31分
倉沢美左(東洋経済オンライン編集部記者)※東洋経済オンラインより転載

名だたるハイテク大手が決済事業でしのぎを削るなか、アマゾンが見据えるのは?(撮影:尾形文繁)

ネットで買い物をする人にとって、それぞれのサイトでのユーザーネームやパスワードの管理ほど煩わしいものはないかもしれない。面倒なあまり、セキュリティは二の次で、すべて同じものを使っている人も珍しくないだろう。より多くのショッピングサイトで、共通のアカウントが使えたら――。そう考えているのは、ユーザーばかりではないようだ。

アマゾンは2007年に、他サイトでもアマゾンのアカウントを利用して買い物ができるID決済サービス、「Amazon Pay(アマゾンペイ)」を開始。日本でも2015年5月からサービスを始め、これまでに劇団四季や眼鏡大手JINSなど1000社以上のショッピングサイトが利用している。4月19日には、大手衣料品通販サイト「ゾゾタウン」が導入したことから、日本でも一気に利用機会が増える可能性がある。

ネット決済市場は、今後大きな成長が見込まれる市場の1つ。それだけに、老舗のペイパルやスクエアに加えて、グーグルやアップル、フェイスブック、楽天などハイテクのビッグネームが次々と独自のサービスを開始。事業者とその利用者を取り込むことで、それぞれの"経済圏"拡大を急いでいる。

利用者は使い慣れたサービスを好む

ショッピングサイトがアマゾンペイを導入することによる、サイト利用者にとっての最大のメリットは、なんといっても前述のとおり煩わしさがないことだ。アマゾン以外のサイトで買い物をするときでも、アマゾンのIDとパスワードを使えばいい。

もちろん、ショッピングサイト側は自社の決済システムを含め、利用者のニーズに合わせて複数の決済オプションを設けることが可能だ。が、「利用者にとっては『アマゾンでの経験』がショッピングのスタンダードとなっている場合が多く、慣れたサービスを好む傾向がある」と、アマゾンでID決済事業を統括するパトリック・ゴティエ副社長は話す。

アマゾンペイは、たとえば雑誌の定期購読やソフトウエアの利用など、サブスクリプション的な支払いに利用することも可能。ソフトウエアの場合は、毎年更新という場合も多いが、年1回しか利用しないサイトでIDやパスワードを思い出すのは至難の業だけに、アマゾンと同じものが使えるならば利用者にもメリットがある。将来的には電気代や携帯電話代、あるいは、スポーツジムや習い事の月謝などへの利用も考えられるだろう。

一方、事業者側にとってのメリットは大きく4つある。1つは、アマゾンの利用者を、自社サイトで取り込めること。つまり、新規顧客の獲得である。ショッピングサイトで気に入ったものを見つけても、新規登録するのが面倒で買わなかった、という経験がある人も少なくないだろうが、アマゾンペイを導入していればこのハードルは低くなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBは6月利下げ、それ以降は極めて慎重に臨むべき

ビジネス

日本の格付け「A」に据え置き、アウトルック「安定的

ビジネス

超長期国債中心に円債積み増し、リスク削減で国内株圧

ビジネス

独総合PMI、4月速報50.5 10カ月ぶりに50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中