最新記事

タンザニア

タンザニアで迫害されるアルビノの命の歌

2017年5月30日(火)18時33分
コナー・ギャフィー

webw170530-albino02.jpg
タンザニアでは、身体を切断されることもある Marilena Delli

アルビノの人々が襲撃されるのは迷信のせいだ。マラウイやモザンビークを含むサハラ以南のアフリカ諸国の一部では、呪術医などが、アルビノの人肉には魔術的な力があり、幸運や富をもたらすという迷信を広めている。

タンザニアにおけるアルビノに対する仕打ちには、軽蔑と悪意が入り混じる。アルビノの子どもが生まれると、多くの父親は羞恥心から母親を家から追い出す。アルビノの臓器や手足は高値で売れるため、常に命を狙われる。2009年に赤十字が発表した報告書によれば、アルビノで全身のパーツが残った遺体は7万5000ドル相当で取引されるという。

予想を超える深い傷

ブレナンは、アルビノとタンザニア社会の共生を目指すイギリスの慈善団体「スタンディング・ボイス」から支援を得てアルバムを制作した。ブレナンを中心に、ウケレウェ島で暮らすアルビノ20人が加わり、11日間でバンドを結成。アルビノのメンバーは、最初困難にぶつかった。全員が音楽の素人というだけでなく、メンバーの多くが長い間家族の手で隔離されていたうえ、教会で歌うことも禁じられていたのだ。

「一部のメンバーにとっては、ゼロというよりマイナスからのスタートだった。文字通り、社会から締め出されてきたのだから」とブレナンは本誌に語った。「私たちが予期すらしなかった深い心の傷に遭遇することの連続だった」

それでもバンドのメンバーは徐々に心を開き始めた。アルバムの作詞や収録に参加した。メンバーは大半がアルビノだったが、アルビノの子どもを持つ母親も2人いた。ブレナンはメンバーに、個人的な経験を歌詞に込めるよう励ました。その結果、迫害された過去を振り返った『They Gossiped When I Was Born(私が生まれたとき、彼らは陰口を叩いた)』『Never Forget the Killings(あの殺戮を忘れない)』の他、アルビノの人々が持つ抵抗の意志を表す『Tanzania Is Our Country, Too(タンザニアは私の国でもある)』など、脳裏に焼きつく曲が次々に生まれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル経済活動指数、第1四半期は上昇 3月は低下

ビジネス

マイクロソフト、中国の従業員700人超に国外転勤を

ワールド

アルゼンチン、4カ月連続で財政黒字達成 経済相が見

ワールド

トランプ氏、AUKUSへの支持示唆 モリソン前豪首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 7

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中