最新記事

中国

中国、不戦勝か――米「パリ協定」離脱で

2017年6月5日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そのため、(EUとは通商交渉で難航し共同声明を出すには至ってないが)EU首脳との会談で気候変動への技術革新に関しては「EUと中国の関係こそが柱になっていく」との認識を共有した。

特に今年は中国-EU関係樹立40周年記念に当たり、互いの首脳シャトル外交も18回目になる。国際社会における後退をアメリカが自ら選択したことにより、EUとの関係においても世界第二の経済国である中国はその存在感をアピールする結果を招いた。

クシュナー氏のロシアゲート疑惑が影響か

5月29日付のコラム「駐米中国大使とも密通していたクシュナー氏」でも触れたように、キッシンジャー元国務長官や中国政府に洗脳されてしまったイヴァンカ夫妻、特にクシュナー氏は、ロシアゲートに関してFBIから名指しで調査対象とされており、トランプ政権にとっては痛手だろう。中国政府が背後で動くことによって、直接的にはクシュナー氏らによって政権中心から追い出された対中強硬派のバノン氏(主席戦略官)等を政権中枢に復帰させることによって、ロシアゲート疑惑を避けようと、トランプ大統領は考えたのではないかと推測する。

パリ協定離脱派にはバノン氏やプルーイット氏(環境保護庁長官)などがいて、離脱反対派にはイヴァンカ&クシュナー夫妻やティラーソン氏(国務長官)などがいる。

G7首脳会談では、ドイツのメルケル首相が、女性同士としてか、トランプ大統領に影響力を持つイヴァンカ説得を試みている。しかしメルケル首相と相性の悪いトランプ大統領は、ロシアゲート疑惑も考慮して、今回はイヴァンカ夫妻の言うことは聞かなかったものと思われる。

ロシアとのつながりによって大統領選挙を有利に持っていったのは、否定できない事実だろうと多くのアメリカ国民が思っているようだ。その疑惑をかわすことが目的だったのか、あるいはオバマ政権で決めたことは何でも覆したいという思いがあったのか。

トランプ大統領自身は選挙公約で言ったことを守るためと言い、また「私はピッツバーグ市民を代表して選ばれたのであり、パリ市民を代表していない」と、鉄鋼業の衰退に苦しんだピッツバーグの労働者に寄り添う姿勢を強調してみせた。しかし肝心のピッツバーグ市長は、「ピッツバーグは世界とパリ協定を支持する」と反論した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米下院、貧困や気候問題の支出削減法案 民主党反対 

ワールド

米FRB議長がコロナ感染、自宅から仕事継続

ビジネス

グローバル株ファンドに資金流入、米利下げ期待受け=

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中