最新記事

日本企業

ドン・キホーテの格安4Kテレビが速攻で完売した理由

2017年7月13日(木)11時29分
菊地悠人(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

予約注文を含め販売台数は3000台。ネット上では「ジェネリックレグザ」とも呼ばれている(記者撮影)

「驚安の殿堂」にここ数年で最も強烈な目玉商品が加わった。しかし、その商品は売り場から「瞬間蒸発」してしまった。

全国でディスカウントストアを展開するドン・キホーテ(以下ドンキ)は6月15日に同社初となる4K対応50型液晶テレビを発売した。商品は店頭で飛ぶように売れ、初回販売分はわずか1週間で完売となった。予約注文を含めて販売台数は3000台に達した。

ドンキは予約受付を一時休止。今後の販売については「部材の調達が整い次第再開する」(ドンキ)とのことだが、明確なスケジュールは未定だ。

6万円以下で50型の4Kテレビを作りたい!

ドンキのテレビが圧倒的な支持を得たのは、5万4800円(税抜き)という破格の安さ。4K液晶テレビというジャンルの中で単純な比較は難しいが、家電量販店に並ぶ他社の50型テレビ(10万円前後)と比較しても最安値といえる。もうひとつは「レグザ」を展開する東芝映像ソリューション製のメインボード(電子回路基板)を採用したことだった。

それにしても、なぜここまで安くできたのか。そこにはドンキで10年以上にわたって家電の開発を続けてきた担当者の存在があった。

「6万円以下で50型の4Kテレビを作りたいとずっと考えていた」。今回、開発を担当した、トレンドセレクトMD開発本部・マネージャーの寺尾尚之氏とSPA開発本部・サブマネージャーの水橋晃司氏はそう口をそろえる。

家電をこよなく愛する2人は、4Kテレビの市場価格がほかのカテゴリーのテレビと比較して下がっていないことに着目。家電メーカー各社が付加価値をつけ、テレビをより高い価格で発売する姿勢に疑問を感じていたという。そこで無駄な機能を削ぎ落としたテレビを作るべく、2016年6月から4Kテレビの開発プロジェクトがスタートした。

実は、ドンキは2009年から液晶テレビのPB(自社企画商品)の開発を進めており、約10万台の販売実績がある。4Kとはいえ、これまで手がけてきた液晶テレビと生産工程はほとんど変わらない。最初の半年間で、部材を選定し、2016年12月には東芝製のメインボードを使用することに決めた。決め手となったのは画面の応答速度の速さだという。

メインボードとは、レグザの商品を展開している東芝映像ソリューションズが外販しているテレビ受信システム「デジタルボード」のことだ。

ただし、本家のレグザと異なり、多少機能が落ちるのは事実だ。レグザの最新モデルに搭載されている4Kアップコンバート(4K画質でない映像を4K相当に自動で変換する機能)がなかったり、HDR(ハイダイナミックレンジの略。明るいところをより明るくする機能)が非対応であったりする。

基本的には自社で商品を企画し、メインボード以外にも液晶パネルなどの部材を調達。生産を委託しているパートナー企業の中国工場で生産・組み立てを行ったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンク、9月30日時点の株主に1対10の株式

ビジネス

ドイツ銀、第1四半期は予想上回る10%増益 投資銀

ビジネス

日産とマツダ、中国向け新モデル公開 巻き返しへ

ビジネス

トヨタ、中国でテンセントと提携 若者にアピール
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中