最新記事

金融

フィンテックの台頭でお堅い銀行が様変わり

2017年7月24日(月)11時02分
リー・キューエン

フィンテック時代が幕を開け、イノベーションを行えない金融機関は時代に取り残される運命が待っている。

そこで、多くの有力金融機関はKPMGのようなコンサルティング会社の力を借りて、ビジネスを変革しようとしている。「いささか軍拡競争の様相を呈している」と、KPNGのパートナー(共同経営者)、マーリー・ライスベックは言う。

顧客の要求は、厳しさを増すばかりだ。ライスベックによれば、顧客は金融サービスに対して、アマゾンのようなオンラインショッピングサイトに匹敵する使い勝手のよさを期待するようになっている。

既存の金融機関に不満を抱いているのは、個人の顧客だけではない。決済処理企業のWEXが全米の500人のCFO(最高財務責任者)を対象に実施した調査によると、モバイル決済を重要と考える人は全体の55%、ブロックチェーンによる決済をとても重要と考える人は54%に上る。企業関係者ですら、融通の利かない金融機関に不満を募らせているのだ。

多くの金融機関幹部たちは、抜本的変革の必要性を痛感している。「誰もが常に文化の変革について語っている」と、ライスベックは言う。

文化を変えることがうまく進まない場合もある。シティグループのシティ・フィンテック社でグローバル商品開発責任者を務めるキャリー・コラジャは、ペイパルから移籍してきたとき、変革を促すために上意下達型の業務フローを見直した。新興企業のオフィスをお手本に、新しい開発拠点も設けた。

紙の書類の時代は終わる

金融機関は、具体的にどのようにビジネスを変えるべきなのか。「顧客はいつでも自分のデータにアクセスできるべきだ」と、フィンテック企業フィニシティのニック・トーマス共同創業者は言う。同社は最近、大手銀行のウェルズ・ファーゴとデータの共有に関する協定を結んだばかりだ。「金融機関とフィンテック企業の提携が増えつつある」と、トーマスは言う。

テクノロジー企業の積極的な動きにより、金融業界とテクノロジー業界の境界線が曖昧になり始めている。ウェルズ・ファーゴのイノベーショングループ担当上級副社長シェリー・リトルジョンのみるところ、市場の状況を一変させる可能性があるのはアマゾンだという(ただし同社は基本的に、現時点で金融サービスを提供していない)。

これからの金融ビジネスで重要になるのは、モバイル時代に合わせて顧客との関わり方を根本から変えることかもしれない。それにより、融資市場を大きく広げられる可能性がある。

【参考記事】キャッシュレス社会で韓国の銀行が大変身 カフェ併設に移動型店舗も登場

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落500円超安、円安進み為替介入

ワールド

カボベルデ、アフリカ初の平和サミット出席表明 ゼレ

ビジネス

過度な変動への対応、介入原資が制約とは認識してない

ビジネス

豊田織機とアイチの親子上場、英投資ファンドが解消を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中