最新記事

単独インタビュー

ヘンリー王子が語った母の死と英王室(前編)

2017年7月25日(火)18時00分
アンジェラ・レビン(ジャーナリスト)

20年近く感情を「押し殺していた」ことを認めたヘンリーは、今や自分が感情豊かであるのを世間にアピールしたがっている。「情熱が過ぎる場合もある」と、王子は笑顔で言った。「以前はそれでトラブルになった。口先だけで行動しようとしない人間が嫌いだ、という理由もある」

ヘンリーが「行動」しようと考えている多くのことの1つは、イギリス君主制の見直しだ。「君主制は良い方向に向かう力だ」と言う。「女王が60年間以上かけて築いてきた前向きな雰囲気を維持したいが、女王の在り方をそのまま引き継ぐつもりはない」

いずれ父親のチャールズが国王となり、次は兄ウィリアムが継ぐ。若い世代のウィリアムの人気とヘンリーの魅力とエネルギーは、ダイアナの死によって徹底的なダメージを受けたかに思えた英王室のブランドを復活させるのに役立ってきた。

「イギリスの君主制の現代化に取り組んでいる。自分たちのためではなく、国民の大義のために......国王や女王になりたいと思う王室の人なんているだろうか。いないと思う。でも私たちはその時が来たら義務を果たす」

女王の公務の大半を占める慈善事業を若い世代が引き継ぐ際は、より焦点が絞られるだろう。昨年まで、女王は600件を超える慈善事業に関与していた。王室全体では約3000件だ。

【参考記事】ウィリアム王子が公務をさぼって美女と大はしゃぎ、英でバッシング

母親のレガシーを前進させる

henryinter02.jpg

母の面影 若く美しい母ダイアナに抱かれて(88年) Hugh Peralta-REUTERS

ウィリアムが国王になる時代には、この数字は大きく減っているはずだ。ヘンリーに近い筋は「彼らはいくつかの慈善事業を選び出し、活動内容を完全に調査してからきちんと関わっていきたいと考えている。彼らはセレブ集団(の活動)と思われるのを嫌う」と言う。ヘンリーも同意見だ。「私たちは時間を賢く使う。どこかに現れて握手して、それで終わりにしたくない」

自分にとって大事な役割は3つあると王子は考える。まずは母ダイアナのレガシーをたたえ、前進させることだ。「母は自分がやり遂げられなかったことを、私にやらせたいだろうなと直感的に感じている」

HIV感染に対する根拠のない恐れが蔓延していた時期、ダイアナはエイズ患者と触れ合う写真を撮影させ、世間の偏見を変えるのに役立てた(ダイアナはインタビューで「私は人々の心の王妃でありたい」という忘れ難い言葉を残した)。

昨年12月、カリブ海のバルバドスを訪れたヘンリーは、歌手リアーナと一緒にカメラの前でHIV検査を受けた。06年、同じく幼い頃に母親を亡くしたアフリカ南部のレソトの王子と共にチャリティー財団「センテバレ(現地語で「忘れな草」の意味)」を設立。エイズ感染率が世界2位のレソトの子供を支援する組織だ。

さらに世界中で地雷や不発弾を撤去しているイギリスの団体ヘイロー・トラストも支援し、母親の「世界から地雷をなくす」活動を受け継いでいる。

2つ目の役割は、91歳の女王を支えること。女王は自分の公務のいくつかを徐々に孫に肩代わりさせている。

インタビュー後編はこちら

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年7月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中