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トルコ情勢

トルコ最大野党による「正義の行進」の意義

2017年7月24日(月)17時50分
今井宏平(日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員)

「正義の行進」の意義

「正義の行進」が始まったきっかけは、共和人民党の議員で元ジャーナリストであるエニス・ベルベルオール(Enis Berberoğlu)がジュムヒュリエット紙に不正に情報を流していたとして、懲役25年の判決が下された事件であった。クルチダールオール党首は、この事件を受け、抗議のためにアンカラ・イスタンブル間、約400キロを行進することを決定した。

【参考記事】トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

ただし、この行進は極力党派色を抑える形で実施された。党旗や党のスローガンは掲げられず、クルチダールオールも白いシャツを着て参加した。これは、共和人民党がこれまでのように世俗主義エリートというアイデンティティに固執するのではなく、エルドアン大統領および公正発展党の政治方針に反対する人々を広く取り入れる狙いがあったものと思われる。行進の参加者は予想以上に増え、最終日の7月9日には150万人が参加したと見積もられた。

それでは「正義の行進」の意義は、繰り返しになるが、共和人民党がこれまでの世俗主義エリートの党という枠を越え、反エルドアン大統領・公正発展党という姿勢を言説だけではなく、行動によって明確に示したことであった。

ただし、課題もある。クルド系政党の人民民主党は「正義の行進」への支持を宣言し、議員が行進に参加したものの、「正義の行進」ではクルド問題の解決などについて共和人民党から明確な意志は示されなかった。

また、冒頭でも述べたように、トルコ国民はエルドアン大統領と公正発展党への支持をめぐって分極しており、エルドアン大統領と公正発展党を支持しない陣営に属する共和人民党と人民民主党が、限られた浮動票をめぐり競合する可能性が高い。結局、分極化の溝は深く、「正義の行進」は次回の2019年の選挙にほとんど影響を与えない可能性がある。

とはいえ、第二政党である共和人民党のより広範な支持を獲得しようとする動きは、4月16日の国民投票を僅差で勝利し、冷や汗をかいたエルドアン大統領および公正発展党にとって、無視できない動きであろう。エルドアン大統領は、「正義の行進」への参加者たちを「2016年7月15日のクーデター未遂を支持する動きだ」と牽制している。

5月にはエルドアン大統領が公正発展党に復帰し、改めて党首に選出されるなど、2019年11月の大統領選挙および総選挙に向けた動きはすでに火蓋が切って落とされている。共和人民党が「正義の行進」に続き、今後、どのような政策を打ち出していくのか、注視していきたい。

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