最新記事

北朝鮮

ティラーソン米国務長官の「北朝鮮との対話模索」と米朝秘密会談

2017年8月4日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ティラーソン米国務長官 Yuri Gripas-REUTERS

ティラーソン米国務長官が1日、ある時点で北朝鮮との対話を望むと表明した。米朝間では水面下の「トラック2外交」が早くから行なわれているが、休戦協定を平和条約に持っていくための交渉の裏側を考察する。

ティラーソン米国務長官発言の背景

8月1日、ティラーソン米国務長官は「アメリカは北朝鮮の政権交代を目指しておらず、ある時点で同国と対話することを望んでいる」と表明した。ワシントンのロイター電が伝えた。もっとも、「北朝鮮が核保有国にはならないと理解することが前提になる」としてはいるが。

ドナルド・トランプ氏は大統領選挙期間中の昨年6月に共和党の指名候補に確定したときの演説で「彼(金正恩)がアメリカに来るなら受け入れる」と、金正恩(キム・ジョンウン)の訪米を歓迎する意向を示した。反論に対しては、「仮に会談が実現した場合でも、公式の夕食会はやらない。会議用のテーブルでハンバーガーでも食べればいい」とかわしている。その後も何度か金正恩(キムジョンウン)と会ってもいいという類の言葉を発してきた。

大統領当選後は、4月30日の米CBSテレビの番組で、「金正恩委員長は、なかなか頭の切れる奴だ(pretty smart cookie)」と讃えたり、5月1日には、アメリカの通信社、ブルームバーグから受けたインタビューで「もし私が彼と会うのが適切な状況下であれば会う。そうできれば光栄だ」と述べている。

適切な状況とは何かというと、基本的に「北朝鮮が核・ミサイルを放棄するという条件を呑むならば」ということである。

これに関しては、5月3日のコラム「トランプは金正恩とハンバーガーを食べるのか?」で述べた。

北朝鮮が「核・ミサイル開発を先に放棄する」などという前提条件を満たすはずがない。

だから習近平にも失望を露わにしたトランプは、遂に「北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)による米国攻撃を目指し続けるのであれば、北朝鮮と戦争になる」と述べたという。8月1日に、米上院議員のリンゼー・グラム氏が、「トランプとの会話」をNBCテレビの報道番組で明らかにした。それによればトランプは「戦争になったとしても、現地で起きる。何千人死んでもこちらでは死者は出ない(ので構わない)」という主旨のことを言ったとのこと。

方針をコロコロ変えるトランプに抵抗するかのように、ティラーソンは「対話への模索」を口にしたものと思う。

ティラーソンはさらに「アメリカ政府は北朝鮮の政権交代を目指さず、政権崩壊も求めない。朝鮮半島再統一の加速は求めず、38度線の北に米軍を派遣する口実も求めていない」と述べた上で、「アメリカが対話を望んでいるということを、北朝鮮がいつか理解することを望む」と付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中