最新記事

中国外交

習近平、苦々しい思い:米韓合同軍事演習

2017年8月25日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

8月21日から韓国で始まった米韓合同軍事演習(写真は3年前の米韓合同軍事演習) Kim Hong-Ji-REUTERS

北朝鮮にグアムへのミサイル発射を思い留まらせた習近平としては演習を中止させたかった。しかし米制服組トップのダンフォードが習近平と会談しながら、日米2+2後に中止しないと発表。中国は米空軍U-2偵察機にも注目。

習近平が特別に手厚くもてなしたダンフォード米統合参謀本部議長

8月14日に訪韓して韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は、翌15日に3日間の予定で訪中した。初日は中央軍事委員会委員で、軍事委員会聯合参謀部の房峰輝参謀長等と会談の後、17日には人民大会堂で習近平国家主席&中央軍事委員会主席と会談した。18日には訪日して安倍首相や自衛隊の河野克俊統合幕僚長と会談した。

これら韓・中・日への一連の訪問の中で、筆者が唖然として注目した「ある光景」がある。

それは招待者側首脳とダンフォード統合参謀本部議長との、対談の際の座席の位置関係だ。

まず韓国。

さまざまな映像があるが、はっきりしているのでKorea.Netのこの写真をご覧いただきたい。文在寅が真ん中に座り、ダンフォードは左右両脇に並べられた米韓双方の座席の最初の席に座っている。つまり文在寅が王座にいて、それ以外は「その他」扱いなのである。

動画で観るならば、ANN NEWSが割合に見て取れるかもしれないが、実は握手の後、着席する際にダンフォードは一瞬、戸惑っていた。まさか従者席に回されると思わなかったので、文在寅に着席を促されたときにダンフォードは文在寅の隣の席に目をやり、そこに椅子がないのに気が付いて、急いで従者席の先頭に座った。ANN NEWSでは、残念ながら「その瞬間のダンフォードの戸惑い」がカットされているので観られないが、興味のある方は相当する動画のページを探してみていただきたい。

あれだけアメリカの軍事力に頼りながら、よくもこんなことができるものだと唖然とした。

習近平との会談に入る前に、訪中後の訪日の際の安倍首相との会談の際の座席関係はどうなっているかを観てみよう。TBS NEWSの動画(JNN)における安倍総理との椅子の違いにご注目いただきたい。

文在寅よりはいくらかは良く、一応「安倍vs.ダンフォード」が対等の位置関係に座っているが、なんと、椅子が異なる!何ランクか下の(値段が安い)椅子にダンフォードを座らせ、安倍首相はランクが高い(値段が高い)、やや豪華な椅子で、しかも座席の高さが10センチ(?)ほど高いのである。背の高さ、足の長さからの配慮で座席の高低を決めるのならば、安倍首相もなかなかの長身ながら、ダンフォードさんの方が明らかに高い。なのに、なぜ安倍首相の座席の高さを高くする必要があるかと言えば、「身分の違い」を明らかにさせる以外にはないと考えるのが妥当だろう。これを外交プロトコル(外交儀礼)と言えば説明できなくはないが、プロトコルには拘束力はない。礼を失しなければ、あとは受け入れ側の気持ちの問題と言っていいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中