最新記事

米軍事

北朝鮮ミサイル発射で注目集まる米国「迎撃」の選択肢

2017年8月30日(水)17時24分


迎撃成功の確証なく

米国が最近行ったミサイル迎撃実験は成功したものの、専門家は、新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)などを含む米国のミサイル防衛システムが、標的を撃ち落とす確証はないと指摘する。

米国はミサイル防衛システムの研究と開発に過去18年間で400億ドルを投じてきたが、同システムを戦争が行われている下で配備したことはない。

北朝鮮の拡大するミサイル能力を米軍が防衛できるとの見方に、懐疑的な声もある。

一部の専門家は、米国のミサイル防衛が対応できるのは飛来してくるミサイル1発、もしくは少数だと警告している。北朝鮮の技術と生産が進歩し続ければ、米国の防衛が追いつかなくなる可能性がある。

ワシントンのシンクタンク「38ノース」のミサイル専門家、マイケル・エレマン氏は、迎撃が失敗したとしたら、きまりが悪いことではあるが大きな驚きではないと指摘。「ミサイル防衛はミサイルに対する盾とはならず、言うなれば防空のようなものだ。敵対勢力が与える損害を最小限に抑えるよう設計されている」と語った。

ある匿名の米当局者は、ミサイルが日本または韓国の上空で迎撃された場合に民間人の犠牲者が出るリスクや、北朝鮮による報復措置の可能性を判断することが困難であることから、米軍は直接的な脅威をもたらさないミサイルを撃ち落とすことに特に慎重的だと述べた。

米軍・情報当局者は、米国が軍事行動に踏み切れば、北朝鮮がソウルと在韓米軍をミサイルと大砲で攻撃する可能性があると指摘する。

さらに、米国または同盟国を危険にさらさない北朝鮮のミサイルを狙うことは、法的に問題が生じる可能性もある。北朝鮮の弾道ミサイル開発を禁止する国連安全保障理事会の決議は、こうした行為を明確に認めていない。

(Matt Spetalnick記者、David Brunnstrom記者)

[ワシントン 29日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、S&P500年末予想を5500に引き上げ

ビジネス

UAE経済は好調 今年予想上回る4%成長へ IMF

ワールド

ニューカレドニア、空港閉鎖で観光客足止め 仏から警

ワールド

イスラエル、ラファの軍事作戦拡大の意向 国防相が米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 8

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中